© Kengo Kuma & Associates

イタリア 2012プロジェット・マニファットゥーラ


トレント
オフィス | 店舗/飲食
進行中
35,000

新しいwork styleにふさわしいwork spaceをわれわれはまだ見つけ出していない。そもそもオフィスというビルディングタイプは、邸宅の中の、机の置かれた小部屋からスタートした。住宅というものが、あらゆる建築の基本単位として存在し、その中の小さな執務空間から、オフィスはスタートしたのである。

20世紀に、オフィスは住宅から脱出し、都市を構成する基本単位となった。都市の中に、オフィスビルという名の大きなハコを作り、その中に人間を押し込め、効率よくデスクワークをさせることが、20世紀の繁栄を築いた。人間は養鶏場の中に押し込められたといってもいい。この養鶏場の原型を提出した建築家は、ミース・ファン・デル・ローエである。彼は美しいガラス張りのオフィスビルをデザインしたが、養鶏場であることにかわりはない。

われわれは今、ハコから脱け出した仕事をしたいと、強く望んでいる。それができる新しいコミュニケーションツールを手に入れることができたからであり、またいつまでもハコの中にいたら、精神、身体が壊れてしまい、また、この地球自体も壊れてしまうことに気づいたからである。しかし、ハコを出たあとで、どんな空間で働き、生活したらいいかの答えはまだ出ていない。このロヴェレートのプロジェクトは、ハコを出た後の生活の、ひとつのモデルを世界の人々に見せることになるであろう。ここでは歴史(マニュファクチューラ)と、最も新しいテクノロジーが同居し、ハコが解体されて、緑と人間とが同居するのである。これをもはや建築と呼ぶ必要はないのかもしれない。ここにはただ人間がいて、人間が時間と、そして自然と会話をはじめるのである。

チーム ムッチオラ マウリッィオ* パブリケーション GA DOCUMENT 121