© Antje Quiram

ドイツ 2007Tee Haus

2007.7
フランクフルト
パビリオン
竣工
31
1F

「負ける建築」を一歩進めて、「呼吸する建築」を作りたいと考えた。「負ける」とは環境に対する一方的な受動性である。「呼吸する」とは、環境との間のインタラクティブなやりとりである。

ある時は息を潜めて小さくなり、またある時は胸いっぱいに空気を吸込んで大きくなる。そのような可変的な建築のあり方を考えた。技術的にはテナラと呼ばれる新素材の膜を用いて、中間に空気をいれた二重膜構造とした。二重膜の間はポリエステル製の紐で結ばれ、約600mmピッチで配置されたその紐と膜材のジョイントが膜の上にドットとしてあらわれている。

テナラは通常の膜材とは異なりガラスファイバーを基材として使用していないため、やわらかくしかも軽い。今回のプロジェクトは膜が呼吸するようにして何回も膨らんだり縮んだりするため、テナラの膜を選択した。また、テナラは透明性が高いため、現実と非現実との中間ともいえるような、独特の質感を獲得することができた。

内部には畳を敷き詰め、Tea ceremonyのためのスペースとして設定した。茶室はもともと「囲い」と呼ばれるテンポラリーなスペースから出発した。この呼吸する建築はその原型に近づく試みでもあり、20世紀の呼吸することのないコンクリート建築の対極を目指した。

チーム 斉川 拓未* 施工 H. Müller GmbH、Cannobio S.p.A. 、Gustav Nolting GmbH、Fredi Spahn、松下電工、パナソニック、竹中工務店 構造 Form TL GmbH、Taiyo Europe GmbH パブリケーション 新建築 2008/02 、GA JAPAN 2007/09-10 88 、カーサ ブルータス 2007/04 No.85 写真撮影 ©︎ Antje Quiram