KKAA Newsletter #30 (June 4, 2020) See in English 日本語で観る

June 4, 2020 KKAA Newsletter #30


 人生ではじめてといっていいほど、一つの場所にじっとしている。とはいっても、机の前に座っているわけではなく、歩き続けている。歩くことで、体のリズムを作り、歩くことが脳を刺激してくれて、考えが拡がったり、深まったりすることを実感した。一方で、繰り返しTV会議があって、世界とつながっていないわけではない。

 コンパクトシティ、ウォーカブルシティの重要性をここ数年間、ずっと話したり書いたりしてきたのだが、そういう新しい暮らし方を、こういう形で、自分の身体を使って体験できるとは思わなかった。
 
 風通しの良い建築の必要性についても、ずっと語ってきた。最近出した2つの本『ひとの住処』(新潮選書)、『点・線・面』(岩波書店)のテーマも、コンクリート建築という閉じたヴォリュームを解体して、風通しの良いパラパラとした空間を作りたいということだったので、風通しというテーマは、いつも身近にあった。それを環境という言葉で説明することが多かったが、今は健康という言葉の方がふさわしいと感じている。風を受け、光を浴び、大地の肌触りを感じながら歩くことの幸福を、こんな形で教えてもらっている。
 
 最近完成した国立競技場や高輪ゲートウェイ駅のテーマも、風通しの良さであった。深い庇やルーバーや大きな膜屋根が、それを可能にしてくれている。オリンピックが1年延期になるということは、その「風通しのよい幸福」に気づきなさい、目覚めなさいというメッセージであるようにも感じられる。気づいてから、集い、祝いなさいと諭されたようでもある。この1年間を、その新しい幸福の学習のために使いたいと思う。

Kengo Kuma © J.C. Carbonne