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#82 April 12, 2026
ネオ・メタボリズム宣言
とてもかわいがってもらい、同時に様々に闘いもした大先輩の黒川紀章さん設計の和歌山県立近代美術館でネオ・メタボリズムを宣言した。「万博のレガシー」展のオープニングの基調講演を頼まれ、大胆にも黒川、槇、菊竹が1960年代に唱え、70年万博で世界の建築界を騒然とさせたメタボリズムへのリスペクトと批判をこめてのネオ・メタボリズムである。
この言葉、実は、きのう、きょうで思いついたものではなく、16年前の生物学者の福岡伸一さんとの対談(初出『NA建築家シリーズ02「隈研吾」』)の中で、福岡さんの口から出た言葉であった。
そのトークの中で僕自身の1970年の大阪万博体験の話をした。建築家に憧れ、特に黒川さんの「生物に学べ」、「アジアに学べ」というメタボリズム思想に憧れていた早熟の高校一年生、隈研吾は、メタボリズム建築の実物を体験するために、猛暑の大阪を訪ねたのである。
しかし、そこで待っていたのは大きな失望であった。メタボリズムが提唱した「生物のようにしなやかに新陳代謝するカプセル」は、巨大な金属の化け物でしかなく(写真)、工業化社会の暴力的なメガマシーンそのもので、黒川さんが提唱していた生物ともアジアとも、対極のものに感じられたのである。憧れのヒーローを失った僕は、失意に打ちのめされ、クタクタになって万博会場を後にしたのである。
黒川紀章《EXPO'70 東芝IHI館》(© takato marui)
ある意味、その時の僕の直感は正しかった。鉄のカプセルは生物のしなやかさとはほど遠く、中銀カプセルタワー(1972)のカプセル住戸は一度も取り換えられることなく、2022年に取り壊されてしまった。黒川さんのカプセルで、その後順調に取り換えられたもの、新陳代謝していったものはなかったのである。
なぜ、そんなことになったのか。『動的平衡』で生物の本質が流れにあると主張する福岡さんの答えは、「カプセルは大きすぎた」というものであった。黒川さんのカプセルは、いわば「臓器移植」であって、生物の日常的な新陳代謝とは似ても似つかないものだったというわけなのである。それに比較すると、僕が展開している、小さな粒子の集合体としての建築は、より生物の新陳代謝の実相に近いというのが、福岡さんの黒川・隈比較で、僕はものすごく励まされ、自分の方向性に自信を持つことができたのである。
さらに興味深かったのは、その背後に、20世紀と21世紀の生物観の差異があるという指摘であった。ヨーロッパの近世から20世紀前半まで、生物とは臓器の集合体と考えられていた。骨、心臓、肺、胃といった臓器(オルガン)が組み合わされたものが生物だというわけで、この考えは機能を持つ部品(たとえば歯車や車軸など)の集合体として身体をとらえる考え方で、機械主義、メカ主義と言い換えてもいい。
一方、20世紀半ばからは、細胞に代表される小さな粒子や様々な液体の流れ、平衡として、生物が定義されるようになった。隈の微粒子建築は、この新しい生物観にインスパイヤされたものではないかというのが、福岡さんの見立てなのである。
その微粒子建築が将来、実際の生物のようなしなやかな新陳代謝を達成していけるかは、まだ僕にはわからない。しかし、ひとつ参考になるのは細い木材という微粒子を、釘やボルトを使わずに、ゆるくアセンブルして作られている日本の伝統的な木造建築である。間取り変更、増改築の、傷んだ部材の取り換えにおいて、コンクリート建築とは比較にならないような、フレキシビリティ、しなやかさをすでに充分保有する伝統木造は、微粒子建築のひとつのモデルである。
日本の木造から、そして生物から学んでいくことによって、黒川さんがめざしていた本物の新陳代謝建築に、いつかは到達したいという僕の思いのたけを、黒川さんが設計した和歌山県立近代美術館で、はじめて言葉にしてみた。熱く、激しく、楽しかったあの大先輩が、はるかに空の上から、にっこりとほほえみかけてくれたように、僕は感じたのである。

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