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#83 April 29, 2026
僕にとってデンマークとは何なのか
コペンハーゲンの、今、最もおもしろいアートスペースとも呼ばれるCC (Copenhagen Contemporary)で、木材とレンガの廃材を用いたインスタレーション"Earth | Tree"をデザインし(写真)、僕とデンマークとの関わりを掘り下げた基調講演を行なった。
Kengo Kuma/KKAA, Earth | Tree at Copenhagen Contemporary 2026.
なぜか、デンマークと僕は、関わりが深い。デンマークの国民的作家であるアンデルセンのミュージアム(写真、2022)を設計したり、今は、コペンハーゲンの中心部でオペラハウスの隣りに建つ街の新しいモニュメント、ウォーター・カルチャー・ハウス(写真)も工事中である。そして今回、CCでのインスタレーション。なぜ、デンマークとこのように相性がいいのかを考えていたら、僕にプロダクトデザインや家具の魅力を教えてくれた恩師、松本哲夫先生の記憶、そして松本先生のボスであった(松本先生は長く剣持デザイン研究所の社長を務めていた)、日本の工業デザインの草分けである剣持勇先生に突き当たった。
New Hans Christian Andersen Museum (© Rasmus Hjortshøj - COAST)
Waterfront Culture Center (© Luxigon)
1970年代の後半に学生生活を送った僕にとって、正直に言ってしまえば70年代の建築界はとても退屈であった。内田祥哉と原広司という、少しひねくれた二人の建築家との刺激的な出会いを除いたら、大学での教育も、メタボリズムに挫折した磯崎・黒川の、ペダンティックに理論武装したハコモノ建築にも、うんざりしていた。
その中で唯一エンジョイできた大学の授業が、松本哲夫先生のプロダクトデザインの授業だった。中でもローズウッドの角材を使った実作の授業は、最も輝いた時間だった。
松本・剣持はデンマークから大きな影響を受けたデザイナーであった。丹下健三と併走した彼らは、敗戦からの復興に燃える日本の戦後には、どのようなデザインがふさわしいかという大テーマと、最も真剣に向き合ったと言っていい。その時彼らが対抗しようとしたのは、戦前から続く民藝運動であり、その流れを汲む、柳宗理流の造型であった。日本という場所に根ざしながら、しかも戦後民主主義にふさわしい、合理的で、現代的な生産システムと直結した、軽やかで開かれたプロダクトデザインはありえないだろうか。そんな彼らの夢に、一番多くのヒントを与えたのが、イタリアでもアメリカでもなく、ハンス・ウェグナーに代表されるデンマークデザインだったのである。
デンマークが、イタリアンデザインとも異なり、他の北欧デザインとも一線を画す背景にあるのは、デンマークの歴史を太く貫く、一種のコミュニティ主義、社会主義である。その原点は19世紀のプロイセンに対する敗北(第二次シュレースヴィヒ=ホルシュタイン戦争)であった。そこでデンマークは大きな領土を失い、バイキングの血を引く攻撃的な、海洋・軍事国家は、拡張主義を捨て、小国としての内側の充実、コミュニティの充実、特に教育・農業・生活の質を軸とする、新しい国民性が形成されたのである。
その転換は、第二次大戦の敗北による日本の転換とまったく相似であった。民藝運動のベースにあった戦前の「マッチョな日本」を、生産行為と相互扶助をベースにする小さな日本、コミュニティの日本に転換していくことができるのか。この意識は、丹下健三以上の強さで、松本・剣持を支配していただろうと思われる。
そして彼らとの出会いを僕は運命的なものと感じた。中心志向、民藝志向の強かった父と、人生観から生活空間のテイストまであらゆる場面でぶつかり続けてきた僕は、コミュニティ志向、小ささ指向の彼らと出会い、即座に彼らの哲学を理解し、深く共感したのである。
その出会いが、巡り巡って、デンマークと僕をつなげてくれたのかもしれない。そんな大きな人生の輪を感じて、デンマークの人々と、おいしい野菜をつまみながら、夜遅くまで語り合った。
Copenhagen Contemporary, Denmark.

News登壇のお知らせCCreate x Kengo Kuma/KKAA
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