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#45 December 20, 2021


2021年の年末に、オードリー・タン、マイケル・サンデルという興味深い2人と続けて対話する機会があった。オードリー・タンといえばDXの象徴であり、テクノロジー・オリエンテッドな人物と見られがちだが彼自身はfunを大事にする気さくで楽しい人間で、fast, fair, funという3つのfが大事と語り、僕も全面的に共感した。Convivial という言葉を多用し、onlineで話したが、画面上で彼の顔の脇に、カワイイ絵文字が次々と飛び出してきて、onlineとは思えぬ、ぬくもりのある対話ができた。DXでもあたたかい人間味を残すことの実例だと、彼は自慢していた

マイケル・サンデルとは、彼の繰り広げるメリトクラシー(実力主義)批判、新自由主義批判と都市政策の関係についてトークした。彼がまずチャーチルの有名な言葉「人が建築を作る(shape)が、すると, 次に作った建築が人を作る」を引いて語り始めた。

僕はそれに答えて、20世紀初頭に、人間が作り始めた超高層ビルという形式 ― すなわち競争に打ち勝った、社会のトップに立つエリートが、超高層という都市のトップの場所で働き、君臨するというシステム ― が、メリトクラシー社会の垂直的ヒエラルキーを視覚的に可視化し、格差を拡大し、再生産したと指摘した。それに対する彼の答えが面白かった。確かに20世紀初頭のNYは超高層も発明したが、それに先立ってセントラルパークを用意していた。セントラルパークはあらゆる階層の人間に開かれたコミュニケーションとリラックスのための場所であり、それが超高層のメリトクラシーを補完したというのである。とすれば現代の東京は、セントラルパークという補完装置を持ち込まずに超高層だけを持ち込んでしまった絶対的で救いのないメリトクラシー都市ということになる。

どのようにしたら、この世界に、あらゆる人に開かれた、convivialな場所を取り戻すことができるだろうか。二人の会話から、2022年を生きる、様々なヒントをもらうことができた。

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

Projects東京工業大学 Hisao & Hiroko Taki Plaza東京工業大学の大岡山キャンパスの入口に、学生活動のための新しいプラットフォームをデザインした。 キャンパスの景観に配慮し、正門から東工大のシンボルである時計台への視線を確保するために、建物の過半を地下化し、大地と一体となった緑の丘のような形状とした。デッキと植栽によって構成される階段状の大屋根と、向かい側に立つ図書館の緑の斜面によって、谷のようなランドスケープが生まれ、キャンパスの中に新しい緑の軸が生成された。 留学生との交流、コ・ラーニング、ワークショップ等の複数の活動をシームレスに展開するために、室内もまたひとつの連続した地形としてデザインし、境界の曖昧なプラットフォームが、視覚的にも体感的にも繋がり、刺激し合う、触媒空間が生まれた。 周辺の複雑な環境に配慮しながら、大屋根のセクションを決定し、小さな短冊状の粒子が扇形に広がっていく、扇状地の地形のようなシルエットが生まれた。この地形を支えるツイストする構造体を露出することで、内部にも流動的な空間が生まれた。 建築の外部と内部に創造された二つの地形が共鳴し合う関係が生まれた。 Read More