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#21 May 31, 2019


 コルビュジエ自身がパリで住んでいたアパート(1935竣工)を、リストレーションを担当した建築家の案内で訪れることができた。
 ガラスブロックと黒い鉄骨を組み合わせた外観の写真の印象で、即物的な機能主義建築を想像していたが、彼が住んでいた最上階のインテリアは、いい意味で予想を完全に裏切るものであった。コルビュジエという身体の生々しさが伝わってきて、彼の体温を直接感じることができた。 われわれは初期コルビュジエ作品の白黒写真でコルビュジエに出会ったので、コルビュジエを誤解してきたのではないかと感じた。
 たとえば、彼が絵を描いていたアトリエの壁は、隣の建物と共有する粗石積の共有の壁が露出され、暖かく、やわらかかった(写真)。その壁に置かれていた、古い木製の棚(写真)は、スイスの山奥の時計職人であった彼の父親から譲り受けたもので、感動的なまでに粗末であった。
 高さが90cmもあるスチールフレームのベッドに横たわってみたが、その高さだと、身体がパリの街の上に浮いているように感じた。
 コートやジャケットを掛けるクロゼットは、彼の分も妻の分も60cmしかなく、彼が自分の身体以外のデコレーション ―たとえば服- に全く関心がなく、身体だけを信じ、身体とだけ生きた人間だったと感じた。
 白いタイルの目地につけられた淡いブルーにも、いままでの写真からは気づかなかった。すべてが生々しく、暖かく、直接的だった。シャワーブースは、薄いコンクリートで洞窟のように作られていて(写真)、彼が愛したというアルジェリアの住居を思わせた。

粗石積の壁

 古い木製の棚

 シャワーブース

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

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Projects国際基督教大学新体育施設緑の豊かさで知られるICUキャンパスの森の中に、木でできた優しく柔らかな体育館をデザインした。 森の中に、ミニマルなカーブする木の屋根が舞い降りたような形状を表現しながら、内部には用途ごと——アリーナ棟、プール棟、エントランス棟—―の要請に応じた多様な空間を用意し、それぞれの空間の性能とキャラクターを表現するための最適な木造システムを採用した。 アリーナ棟は240×360の流通材によるアーチ構造を採用して、天井高を確保した。プール棟はライズを抑えるために、同じく流通材を用いた樹状アーチ構造とした。エントランス棟はLVLによる折板構造にして、エントランスキャノピーの片持ち屋根との連続性を確保した。LVL折板は、CLTの柱によって支えられる。 異なる構造システムと断面形状を持つ屋根と屋根の隙間を、採光と換気のための開口として利用し、明るく快適な室内環境が実現した。 木という物質には多様な構造システムを可能にする、フレキシビリティと寛容性が内蔵されていることを、改めて確認した。 Read More
NewsWandering Wonder-ここが学ぶ場-に模型を出展しています会期 2019年5月22日(水)~9月1日(日) (2019年7月1日(月)~ 7月 19日(金)の期間は休館) 会場 建築倉庫ミュージアム 展示室B(〒140-0002 東京都品川区東品川 2-6-10) 開館時間 火〜日 11 時〜19 時(最終入館 18 時)月曜休館(祝日の場合、翌火曜休館) 入場料 一般 3,000円、 大学生/専門学校生2,000円、 高校生以下1,000円 (展示室Aの企画展示「ガウディをはかる -GAUDI QUEST-」の観覧料含む。) *障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料。ご入館の際、障害者手帳等をご掲示ください。 *学生の方は、ご入館の際、学生証を拝見しております。忘れずにご持参ください。 概要 学びの場、育ちの場と聞いて、どんな場所を思い浮かべるでしょうか。幼稚園、小・中学校、高等学校、大学、図書館、美術館…。戦後の民主化とともに日本の教育施設と生涯学習施設は大きく発展を遂げてきました。近年は、少子高齢化、都市への人口集中、グローバル社会、ワークライフバランス推進、授業時数の変更などといった社会の変化が、廃校の利活用、地域資源の活用、主体的な学習、社会人の学び直しやボランティア活動、ミュージアムの役割の充実など、教育や生涯学習のニーズに変化をもたらし、建築空間もそれらに合わせて多様化してきたと言えます。  本展では、教育施設、生涯学習施設だけでなく、それらの枠にとどまらない福祉施設、体験型学習施設、アフタースクール、オルタナティブアートスペースなども含め、誰もが好奇心をもって訪れることが期待される、学びや育ちを生む建築作品をご紹介します。 Wandering Wonder-ここが学ぶ場- Read More