KKAA Newsletter #77 (January 20, 2026) See in English 日本語で見る

#77 January 9, 2026


パビリオンの原点イタリア

名誉博士号を2013年に頂いたミラノ工科大学で、KENGO KUMA: Matter as the Spirit of the Projectというタイトルのシンポジウムが開かれた。僕が基調講演で一番強調したかったのは、このイタリアという場所に僕は育ててもらったということである。そのイタリアへの感謝の気持ちを、直接、ミラノの仲間達に伝えたくて登壇したのである。中でも登壇者の一人であり、インテルニ誌を長年支えてきた、シニョーラ・インテルニとも呼ばれる名物エディター、ジルダ・ボヤルディー(Gilda Bojardi)に、その感謝を伝えたかった。

© UsUp srl

僕は2000年頃から、建築とは形態ではなくマテリアル(材料)であると考え出した。しかし、実際のプロジェクトで、マテリアルの実験をすることはそんなに簡単ではない。そんな時に、マテリアルを使って、小さな実験的なプロジェクトをやらないかと誘ってくれたのがジルダだったのである。ジルダのおかげで、木、石、布といった新しい材料を使った小さなパビリオン、インスタレーションが、イタリアで次々に実現し、僕の方法、僕の哲学が世界に知れわたるようになった。それはすべてジルダのおかげ、イタリアのおかげだったのである。

© UsUp srl

その背景にあるのは、デザイナーの実験をプッシュ、エンカレッジしようという、ルネサンス以来のイタリアの寛容で挑戦的な文化風土であることは間違いない。ずっと日本にいたら、僕は何の実験もできずにくすぶっていただろうと思う。

イタリアのジオ・ポンティ、ブルーノ・ムナーリ、アンジェロ・マンジャロッティ達からも大きな影響を受けた。建築から小さなプロダクトデザインまでを横断的にデザインする彼らの自由な軌跡に励まされたわけである。あらゆる意味でイタリアが僕を育ててくれたことは間違いなく、この晩のディスカッションを通じて、いよいよそのことのありがたさが、身に染みた。

その次の晩は、セイコーとグランドセイコー主催のパリの茶会。僕がデザインした、組み立て式の木と竹の一日だけのパビリオンが、パリのリッツホテルの中庭に置かれ、世界のゲストを招いて茶会が催された。イタリアで始まった様々な実験が、その後、世界に拡がっていったということを実感した夜だった。

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

Projectsときの茶屋パリ、ヴァンドーム広場に面するリッツホテルの中庭(グランジャルダン)に一夜限りのテンポラリーな四畳半の茶室をデザインした。 一切釘やボルトなどの金属は用いず、欠きこんだ部材同士を組み合わせ嵌合と呼ばれる方法によってすべての部材を組み立てた。それは組み立て、解体の時間の短縮にもつながり、解体後様々な場所に移動して「旅する茶室」となることが計画されている。 屋根、壁はスムシコと呼ばれる4㎜巾の細い竹で … Read More
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