コンピュテーショナルデザインと、工業化以前(プレ・インダストリアル)との類似性を指摘した建築のデザイン論で、世界的に注目されている、ロンドンのバートレット校のマリオ・カルポ教授と、われわれの設計したロンドンの日本レストラン「酒の花」で食事をしながら、デザインの未来について、色々語り合った。木や竹の小さなユニットを組み合わせて作った「酒の花」のインテリアを眺めながら、小ユニットの集合がコンピュテーショナルデザインの産物であり、パーティクルとコンピューターという2つのものの仲介をするのは、小ユニットの接合の技を長い時間をかけて磨いてきたクラフツマンシップであるということで、話が盛り上がった。20世紀の粗っぽい工業技術では、パーティクルを組み上げて、豊かで複雑な全体に到達することはできなかった。
イタリアでアルベルティなどのルネサンス期の建築の研究をもともとしていた彼だからこその視点である。彼は、デジタルデザインを第一世代、第二世代というようにカテゴライズしていて、第一世代はまず曲面、曲線にひきつけられて、第二世代がそこから解放されたという。そして、第一世代のカーブ信仰は、工業化社会の流線形信仰の残滓だとするのである。僕がコロンビア大学から日本に帰ったころから、デジタルの第一世代が動き出すのだが、その時僕がいだいていた、彼らへの違和感、そしてそこから今のKKAAの粒子化デザインがはじまるわけだが、その道筋がよくわかった。