2冊のKKAAの作品集が出版された。
一冊はカドカワからのTOKYO KUMA KENGOで、東京という都市にたつKKAAの作品を通じて、この東京という複雑な都市の、構造・歴史・文化を論じるという新しい試みである。建築を「ある場所」に設計するという行為は、その「ある場所」という彼女に、熱いラブレターを書く試みに似ている。そんな少しロマンチックなエッセイを、巻頭に書いてみた。東京にもいろいろな街があり、それぞれの街が、個性的な姿、性格をしている女性だというメタファーを想い付いて、書いたエッセイである。昔の恋のことを振り返るように、建物というラブレターを必死の想いで書き続けてきたそれぞれの時の、情熱的な自分のことを想い出したわけである。建築が場所へのラブレターだという論は、KKAAの建築の本質をついているようにも思う。
もう一冊の作品集は、GAからでた3冊目の作品集である。二川由夫さんが表紙のイメージとして選んだ東京大学のユビキタス研究所のファサード・ディテールは、確かに2013-2020という、この作品集がカバーする時代の空気を象徴するものかもしれない。それはコロナという大きなカタストロフの前の、繊細な時間であった。