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#41 June 30, 2021


 東京、北の丸公園の国立近代美術館で、6月18日から 9.月26日までの会期で、 「隈研吾展:新しい公共性をつくるためのネコの5原則 (Kuma Kengo: Five Purr-fect Points for a New Public Space)」が開催される。国立近代美術館の70年の歴史で,初めての建築家の個展ということである。
今まで何回か隈事務所の個展は開催されたが、今回の展覧会は、様々な意味で、僕の転換点になるだろう。
 ひとつは、国立競技場という大きな仕事に携わり、それを終えたという意味での、僕の転換点。僕にとって、1964年の第一回の東京オリンピックの、丹下健三設計の国立代々木競技場を、どのように折り返せるか、どのように対極たりうるかを意識しながら、「国立」をデザインした。右肩あがりの高度成長期の「男性的なコンクリートのモニュメント」の対極としての、右肩さがり、少子高齢化時代の「やさしい、木のアンチモニュメント」。丹下が1961年に発表した「神の視点」で描いた神的スケールを持つ「東京計画1960」の対極として、猫の視点で、猫的スケールで描いた「東京計画2020」も、そんな気持ちで発表した。
 もうひとつの転換は、コロナという歴史的大事件に出会ったことでの、僕の転換である。コロナは、集中へ、都市へと一方的に流れてきたホモサピエンスの歴史の折り返し地点であると僕は感じた。集中から分散へ、都市から自然へと折り返さないと、僕ら人類はもう「もたない」と全員が感じたのである。
 その折り返しを、どういう形で建築化するか、どういう形で僕らの働き方、僕自身の生き方に反映するか、そういうことも、この展覧会を作り込みながら深く考え、展示の中に、そのためのヒントを埋め込んだ。東京の僕のオフィスを、地方の小さなサテライトオフィスに分解していくことも、公益財団を作って、若い人の育成に力をそごうと思ったのも、すべて、この折り返しの産物である。
 社会、世の中、人生の様々な転換が重なったことで、このような忘れられない展覧会を、みなさんにお見せすることができた。

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

News隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則が東京国立近代美術館にて開催されています隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則が東京国立近代美術館にて開催されています 会期:2021年06月18日(金)— 2021年09月26日(日) 主催: 東京国立近代美術館、文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会 協賛: 大成建設株式会社、大洋建設株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、大光電機株式会社、大日本印刷株式会社、前田建設工業株式会社、株式会社イトーキ、株式会社大林組、鹿島建設株式会社、コクヨ株式会社、小松マテーレ株式会社、株式会社佐藤秀、清水建設株式会社、株式会社JR東日本建築設計、住友林業株式会社、太陽工業株式会社、大和ハウス工業株式会社、大和リース株式会社、株式会社竹中工務店、株式会社丹青社、TSUCHIYA株式会社、東急建設株式会社、TOTO株式会社、戸田建設株式会社、株式会社乃村工藝社、不二サッシ株式会社、三井住友建設株式会社、銘建工業株式会社、株式会社岸之上工務店 協力: エヌビディア合同会社、小松マテーレ株式会社、株式会社スノーピーク、富山市(富山県)、長岡市(新潟県)、株式会社 日本HP、浜田醤油株式会社、V&Aダンディー、真庭市(岡山県)、南三陸町(宮城県)、株式会社モデュレックス、株式会社モノファクトリー、株式会社YAMAGIWA、梼原町(高知県) 助成: 公益財団法人 大林財団 momat.go.jp/exhibition/kumakengo Read More
Projects桐朋学園宗次ホール日本を代表する音楽大学、桐朋学園音楽部門キャンパスに建つ「木」の音楽ホール。 ヒノキと杉のハイブリットのCLTパネルによる折板構造の木造建築であり、そのCLTがそのままホールの内装材、反射板としても用いられている。 すなわち、建物全体を巨大な木の楽器として設計することに挑戦し、桐朋学園にふさわしい最高の音環境が実現した。 外観は楽器の弦に着想を得た木製ルーバーでリズミカルに覆い、楽器そのもののような、響く建築を創造した。 Read More
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