KKAA Newsletter #47 (April 20, 2024) See in English 日本語で見る

#47 April 15, 2022


「やわらかいものへ」
 はじめて、服を作った。カーボンファイバーをはじめとする様々な素材を使ってコラボしてきた小松マテーレから、小松市にある小松大学の、アカデミーガウンのデザインを頼まれたのである。
 ファッションデザインとのコラボやブランドとのコラボ(たとえばイタリアのMontruraとコラボしたsashikoのジャケット)は試みたことがあるが、単独で服をデザインしたのは初めてである。
四角い日本のキモノにヒントを得て、固いジオメトリーが、突如として人体にフィットしたやわらかな衣服に変身する仕掛けを、うちの「布担当」の佐藤未季さんと考えた。キモノは、あらゆる体形にフィットする不思議なフレキシビリティを持っているが、今回のアカデミックガウンも、フリソデの上にはおれるような、究極のフレキシビリティ、究極のユルサを有している。建築でもユルサを追究しているKKAAだが、布のやわらかさを用いることで、ユルサの概念を拡張することができた。
 KKAAは様々な形で木の建築に取り組んできたが、これからは、木よりもさらにやわらかい布に、積極的に挑戦したい。メムメドーズのように建築に布を取り込むだけではなく、今回のプロジェクトのように、建築というフレームを超えて、布単独でのデザインにも、どんどん関わってみたい。
 思い返すと、僕のプロダクトデザインのヒストリーは、高校生の時の、ワイシャツのオーダー体験からはじまっている。綿の生地の番手選びから始まって、カラーの長さ、角度、エッジのとがりかたを決めながら、プロダクトデザインの楽しさに触れることができた。布のデザインは、素材がやわらかいことがおもしろいだけではなく、布を媒介として、身体と環境との関係を学び、そこに介入できることが面白いのである。身体に近づくためには、布のやわらかさが役に立つ。

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

Projects小松大学アカデミックガウン2018年4月に開学した公立小松大学の第1期生卒業式にあたり、オリジナルのアカデミックガウンをデザインした。 アカデミックガウンは欧米を中心に教育機関で着用されてきた伝統的なセレモニーウェア。地域と海外で活躍する人材育成を目指した先進的な教育を実践する小松大学のために、それを象徴するような、新しいガウンをデザインしたいと考えた。 直線断ちした四角いパーツで構成される和服からヒントを得て、一見単純でありながら、身に着ける人の体格や着方で印象が変わる複雑さと豊かさを目指した。長方形のパーツ2枚を一組とし、それぞれ折って重ね合わせ、ポンチョのようにすっぽりと身体を覆うシンプルな構成とし、人体の構造をスタディしながら、袖になる部分の切り込みの深さ、生地の重ね具合のバランスを整えて、このデザインに到達した。セレモニー用の和服の上にも着られる「ゆるさ」も獲得した。 単純な形状から複雑なものを創造するプロセスは折り紙の文化にも通じており、学位が上がると追加されるフードは折り紙で扇を折る要領でデザインした。 素材は地元の繊維メーカー、小松マテーレが開発したKONBUという、ナイロン繊維を凝縮させたハリのある、発色の良い生地がベースになっている。端部の処理や固定部材のつけ方、裁断、縫製を工夫し、紙のような薄くてシャープなエッジが実現した。 Read More
Projects足柄駅・足柄駅交流センター静岡県小山町のJR御殿場線足柄駅に併設された木の地域交流センター。駅は、単なる交通施設ではなく、コミュニティの拠点であるべきだと考え、富士山を正面に望む大階段状の多目的空間を創造した。木で作られたこの空間は、駅の待合空間、地域の情報センター、地域アーティストの展示空間、小山町支所等の役割を果たし、地域の人の交流の空間となっている。 屋根は富士山の方角に向かって伸び上がり、深い軒は、放物線のジオメトリーに従って、嵌合する製材で支えられ、富士山のシルエットの曲線と、屋根の構造体とが響き合う構成となっている。構造には「富士山-金時材」の愛称で知られる小山町産の杉材が用いられ、地域産業活性化のシンボルとしても期待されている。 Read More
Projects界 別府日本の温泉街の代名詞ともいえる別府に、「街=ストリート」をテーマにした旅館をデザインした。温泉街の複合的体験、変化に富んだヒューマンスケールの空間の連鎖の内包をめざして、内部空間と外部空間とがモザイク状に混在する状態に挑戦した。 寄棟屋根が連なる軒の深い低層部で既存の街とスムーズに連続し、上層部はホタテ貝の殻を入れた吹付材に特殊ローラーで凹凸をつけ、海のサザ波と響きあうデザインとした。 竹細工、手漉き和紙、臼杵焼、豊後絞りなどの当地の工芸を用いて、当地の職人とともに、この旅館のための一品をデザインし、それらの粒子の集合体として、内部空間をデザインした。その意味でこれは旅館であると同時に、われわれの「民芸」のミュージアムである。 Read More
News雲の上の図書館 / YURURIゆすはら 日本図書館協会建築賞受賞「雲の上の図書館 / YURURIゆすはら」が、2021 日本図書館協会建築賞を受賞しました。 List of Japan Library Association Architecture Award Japan Library Association Read More