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#73 October 11, 2025


ドイツのケムニッツという都市で、ドイツの建築家、フライ・オットー(1925–2015)との二人展“Beyond Geometry. Frei Otto x Kengo Kuma”に招かれ、尊敬するオットーと僕との共通性と相違について、考えをめぐらせた。

EUには、「欧州文化首都」という名の、都市を毎年選び、そこのローカルな文化を盛り上げ、紹介するための興味深いイベントがある。今年はなぜか、この旧東ドイツの決して派手ではない工業都市が選ばれ、この街の古い工場を始めとする建築遺産を会場にして、様々な企画が立ち上げられた。オットー×隈展も、その目玉のひとつであった。

ケムニッツ近郊ジーグマで生まれたオットーの代表作は、ミュンヘン・オリンピックの膜構造のスタジアム(1972)で、建築を学び始めたばかりの18歳の僕が、この作品から受けた衝撃は今だに鮮明である。

1964年東京オリンピックの丹下健三さんの代々木体育館が、僕が建築家を志すきっかけとなったが、高校生時代の僕は、丹下さんや黒川さんのコンクリートの建物のマッシブな表現が、なにやら高度成長と環境破壊の象徴のように思えてきて、建築という存在自体に対して疑問を抱き始め、それを生涯の仕事にすることにも、迷いが生まれていた。その時に、フライ・オットーの、軽やかで、アメーバのように不定形な膜建築に出会い、希望の光が再び点灯したように感じたのである。

まさかそのあこがれていた彼と、1972年の出会いの半世紀後に二人展をやることになるなどとは、夢にも思うはずがない。ドイツのキュレーターが、様々な側面でフライ・オットーと僕との共通点を「透明」、「自然」などと列挙してくれたのも、身に余ると感じながらも、嬉しかった。

なかでもフライ・オットーのお嬢さんのクリスティーヌさんと対談をして一番感動したのが、彼が最後まで、新しい素材や構法への挑戦を、若い人や学生と、ワークショップスタイルで続けていたというエピソードである。自分もそうありたい、根気よくそのハンブルな若者との対話を続けなければいけないと、強く思った。

もうひとつ印象的だったのは、彼が終戦前に軍のパイロットの研修を受け、爆破されてコナゴナになった都市をいくつも見て、建築というのが、いかにもろくはかないかを知ったというエピソードであった。彼はグライダーに乗る経験があったので、パイロットとして徴兵されたのである。一方僕は空からではなかったが、地震の被災地でコナゴナになった街をたくさん見て歩いた。日本人は戦争中のパイロットでなくても、そのようなものを、たくさん見る機会があるのである。結果として、同じ無常感が、彼と僕の底に流れ、それが僕らを、はかない薄い建築に向かわせているのかもしれないと感じた。無常感は、人間にはかなさの美を、理解させてくれるのである。

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

NewsExhibition – Beyond Geometry – Frei Otto x Kengo Kuma –Exhibition - Beyond Geometry - Frei Otto x Kengo Kuma - Term:April 03, 2025 - June 29, 2025 Venue:Kunstsammlungen am Theaterplatz, Chemnitz Please click here for details. Read More
Projectsケムニッツ展覧会2025年、欧州文化首都に選出された建築家フライ・オットーの生誕地ドイツ、ケムニッツにて、彼との合同展覧会を開催した。自然との共生や地域性を重視し、やわらかな形態の膜構造で知られるフライ・オットーの建築思想には強く共鳴するものがあり、その軽やかさ、透明感といった要素は、日本建築の精神にも深く通じると感じていた。 特に1972年のミュンヘンオリンピックのスタジアムの膜構造は、建築を学び始めた僕に強い … Read More