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#87 June 18, 2026


フォロンとの共振/ベルギーとは何か

20世紀後半のベルギーを代表するアーティストであるジャン゠ミッシェル・フォロン(1934-2005)の財団から招待を受け、ブリュッセル郊外の森の中にある彼のミュージアムで、僕の個展「Kengo Kuma. Architecture in dialogue」を開催することになった。僕の作品から、フォロンと同質のpoetic universeが感じられるという、フォロン財団の皆さんの熱烈なラブコールがあって、まずミュージアムを訪ねた。牛たちが放牧された緑の環境、その真ん中に建つ古い素朴な農家がミュージアムとして使われていて、そのたたずまいに一目惚れした。農家の屋根裏空間の中に、選りすぐった模型、モックアップ、茶室の実物を展示した(会期:2026年9月13日まで)。

© Dany Gys

それは、今までの僕の展覧会の中でも、かなり心暖まる感じのものになった。もともとの農家の屋根裏を支えていた古い木の骨組みが露出されていて、その小さな空間の中に、財団のみなさんが気に入ってくれた木製の模型を並べ、そのまわりに、やわらかな透ける布に、写真や図面を印刷したものを吊り下げた。場所がそもそも小さい上に、様々なイメージが透け、重なり合っていて、農家もフォロンも僕も、ベルギーも日本も、すべてが重層したような不思議な場所が生まれた。フォロンのpoetic universeと僕のpoetic universeが共鳴する、まさにdialogueというタイトルにふさわしい場所だった。偶然にも今年は日本・ベルギー友好160周年で、この二つの小さいながらも多様性に溢れた国の友情を祝う年にあたった。空の上にいる何かの力で、みんながひとつの屋根裏に集合したような、特別な日だった。

その次の朝は、ブリュッセルの街中の、こちらは20世紀前半のベルギーを代表するアーティストであるルネ・マグリット(1898-1967)の古い自宅がミュージアムに改装されているものを、案内してもらった(写真)。なんでもない、小さなタウンハウスで、小ささにおいても、なんでもなさにおいても、フォロンの農家の屋根裏に負けていなかった。

René Magritte Museum. © Victoria Berreau

家の前には彼がしばしば描いた、これまたなんでもない街灯がぽつんと立っていた。この小さな家の一番奥の小さなキッチンで、マグリットは絵を描き続けていたそうである。そのキッチンの奥に、つつましい緑の庭があって、そこがとても魅力的だった。狭い間口のタウンハウスの奥に、小さな坪庭があるというのは、京都の町屋にも共通する構成で、なにか日本とベルギーの共通性を象徴するようでもあった。その坪庭ははるか上の空につながっていて、その小さな青い空を眺めながら、僕が大好きな、今は無くなってしまったサベナ航空のために彼が描いた、青空と鳥のシルエットを組み合わせたポスター(写真)のことを思い出した。

René Magritte, L'Oiseau du Ciel (Sky bird), 1965. / sabena (@fly_sabena) - X

小さな日常の繰り返しが、大きな大切なものにつながっているという感覚は、マグリットにもフォロンにも共通している。その感覚があったから、彼らはずっと作品を作り続けていくことができたのだろう。小さなものと大きなものがつながるということが、こんなにも素敵だということを、僕は二人のベルギー人から教わった。

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

News展覧会Kengo Kuma: Architecture in Dialogueこのたび、ベルギー・フォロン財団にて、「Kengo Kuma: Architecture in Dialogue」展が開催されます。本展は、日本とベルギーの友好160周年を記念し、在ベルギー日本国大使館、ベルギー日本人会、日白協会、ワロン・ブリュッセル・インターナショナル(WBI)との協働により開催されます。 <開催概要> 展覧会名:Kengo Kuma. Architecture in Dial … Read More
ProjectsKengo Kuma: Architecture in Dialogue20世紀のベルギーを代表するアーティスト、ジャン・ミシェル・フォロンはベルギーブリュッセル郊外の田園地帯の旧農家を自身の美術館として残した。  このフォロンのアートの自然に対するやさしさ、未来に対する希望に共鳴し、その残した木造の空間の暖かさとやさしいヒューマンスケールに共感し、隈研吾の作品展を開催した。 作品はlightness、softness、nature、geometryの4つに分類され、 … Read More
ProjectsFolon Pavilion「隈研吾 ― 対話する建築(Kengo Kuma. Architecture in Dialogue)」展の一環として、ラ・カンブル=オルタ建築学部(ULB)およびフォロン財団との協働のもと、ジャン・ミシェル・フォロンの世界観の双方に着想を得たマイクロアーキテクチャーのワークショップを形式で制作した。 螺旋状に立ち上がる垂直構造体《The Fog》と、水平に展開する構造体《The Wave》という … Read More