KKAA Newsletter #14 (March 29, 2024) See in English 日本語で見る

#14 November 22, 2018


NAMAKOパビリオンと

オーストラリアの首都、キャンベラの中心にある湖の島に、キャンベラ大学と東京大学で協働して、NAMAKOというパビリオンを建てた。初めて訪れたキャンベラで、都市について、都市計画について、あれこれと考えた。

1912年に実施された新首都のコンペで一等をとったグリフィン夫妻は、このニュースレターでもたびたび登場する、フランク・ロイド・ライトの弟子であり、それを知って観光すると、キャンベラの中に様々なライトのアイデアが垣間見えておもしろかった。20世紀の新都市計画は、ブラジリアで丹下の建築計画でも、基本的には軸をベースにするリニアなパターンを好んだ。なぜなら、同軸上に永遠に拡張していけるという高度成長的拡張指向が、そのベースにあったからである。行く前はキャンベラも「軸」かと思っていたのだが、実は三角であった。三角という幾何学を用いて、同じく軸的であった西欧古典主義を超えようとしたライト、フラー、カーンの系譜に、このキャンベラも位置していたのである。斜線を用いて、軸を超えようとするKKAAの哲学とも、響き合うものがあった。

ロマルド・ジョゴラ設計の国会議事堂(1988)は、この三角形の重要なポイントを占めるが、いかんせん、80年代の空気が強すぎて、ライト、フラー、カーンの流れから、浮いて見える。一番面白かった建物は、旧国会議事堂前を占拠する、アボリジナル・エンバシーであった。テントとバラックが集合するこの場所に歩いていったら、同行のキャンベラ大学の先生達からあきれられた。あんな危ない場所、自分達は一度も近づいたことはないというのである。

アフリカのサハラ砂漠の集落調査の経験から、笑顔で近づけばどんな人でも受け入れてくれるとおもっている僕は、のうのうとこの「大使館」に踏み込み、アボリジニーから、木の葉の煙をあびる儀式に招かれた。この儀式、日本の祭りにすごく似ていた。

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

Projects湯の駅おおゆ秋田の名湯、鹿角市の大湯温泉のための、物販、カフェ、野外劇場、公園、足湯、ビオトープとが一体となった地域交流施設。地域の伝統工芸として知られる「曲げわっぱ」にヒントを得て、リング状のLVL(単板積層材)を構造体として用いた。このリングの集合した透明な構造壁は、パーティションとしても、棚としても機能する。これにより木造の大屋根の下に、プログラムに応じて変化する流動的空間を生成することができた。 Read More
Projects雲の上の図書館 / YURURIゆすはら高知と愛媛の県境の「雲の上の町」梼原に、図書館/福祉施設の複合体を梼原の杉を使ってたてた。体育館・こども園が芝生広場をはさんで向かい合い、多世代の交流するコミュニティのコアが生まれた。森の中の町梼原にふさわしい、森のような空間、木漏れ日のふりそそぐ室内を、鉄と杉の混構造で実現した。フラットな床ではなく、起伏のある大地を作り、盛り上がった大地はステージともなって、トークやコンサートなどの様々なイベントに利用できる。図書館の中では皆裸足になり、杉を圧密して作った木の床のぬくもりを感じることができ、各々の気に入った場所に寝転んで、本を読むこともできる。図書館と向かい合う福祉施設では、梼原の和紙職人、ロギール・アウテンボーガルトによる梼原の木の皮を漉き込んだ和紙が多用され、あたたかく、「家のような」福祉施設が実現した。 Read More
ProjectsWood/Peel高密度住宅地の中に、ラセン状の居住空間を挿入した。巨大な階段のような床が、ラセン状に連続して大地と空をつなぎ、その外を、剥いたリンゴの皮のような外皮が、ぐるぐると取り巻く。外皮を構成する木のパネルと緑化パネルは、日差しや視線を和らげるスクリーンとしてリンゴを守ってくれる。 *not available for publication Read More
News西日本豪雨復興支援のためペンダント・ライトを製作しました。中川政七商店のECサイトにて期間限定受注販売します。KKAAの設計した旭酒造獺祭ストア 本社蔵店は、2018年7月に西日本を襲った豪雨被害によって壊滅的な被害に合いました。 地域の復興に少しでも力になれたらと、店舗の為にデザインした「酒吊りライト」を販売することにしました。中川政七商店のECサイトにて期間限定受注販売します。 かつて日本酒の醸造に用いられていた袋吊りにヒントを得て、鳥取県青谷の青谷和紙の立体成型の技術をもって作られたこのペンダントライトを通じて、復興に向けた小さな灯りを皆さんと力を合わせてともしていければと思います。 青谷和紙は日本を代表する和紙のひとつであり、鳥取の民芸運動の指導者・吉田璋也との関わりでも知られています。現代の民芸運動を目指すKKAAにとっては特別な縁を感じる場所です。 プロダクトのストーリーと購入について: sunchi.jp/sunchilist/yamaguchi/77484 Read More