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#16 December 28, 2018


ミッテラン政権で文化大臣を務め、パリのグラン・プロジェ(グラン・ルーブル、オペラ・バスティーユ)や、FRAC(現代アート地域基金機構)の生みの親といわれ、20世紀後半以降のフランス文化再生のキーマンといわれる、ジャック・ラングを招いて、東京芸大でパネル・ディスカッションを行った。
 ラングのおもしろいところは、グラン・プロジェでパリの文化的再生を実現すると同時に、FRACを創設して、文化の地方分権、地方文化の再活性化を達成したことである。2000年代以降のnew generation FRACに定められた6拠点のうち、KAEがブザンソンマルセイユの2拠点の建築デザイナーに選定されたので、ラングとは、一度ゆっくりと話してみたかった。
 彼のすごさは、文化行政において、建築というものが、いかに大きな力を発揮できるかを、直感的に理解していることである。同時に、新しい建築が都市を変えようとした時、いかに大きな抵抗に遭遇するかを、彼は語ってくれた。その抵抗に負けなかったからこそ、今のパリ、そしてフランスの地方文化があることを、彼から教わることができた。

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

ProjectsXiangcheng Yangcheng Lake Tourist Transportation Center上海ガニの産地として知られる陽澄湖のポート・ターミナル。同一断面のアルミ押出し材をランダムに配置して、大きな丘のような、地形的ストラクチャーを創造した。 インテリアもまた、傾斜した床の集合体として構成され、エクステリアでもインテリアでも地形的なるもの、地形のように曖昧でランダムな状態が創造された。 Read More
ProjectsCamper Paseo de Graciaバルセロナ、カタルーニャ広場に面するCAMPERの店舗をリニューアルした。ヴォールト状の陶板を型枠にして、床スラブを打設するカタラン・ヴォールトは、カタルーニャが生んだ画期的な建築構法であり、木製の梁で床を支えてきたそれ以前の構法に革命をもたらした。ガウディもカタラン・ヴォールトから多くのヒントを得たといわれている。 このカタラン・ヴォールトのユニットで、靴を飾る棚、ベンチ、カウンターをすべてデザインし、カタロニアならではの、温かくヒューマンなショップが生まれた。 Read More
ProjectsForest for living25mm厚の構造用合板(カラマツ)を篏合させていくことによって、一種の樹上生活を可能とする、クラウド状のパビリオンをつくった。 構造体、間仕切り、家具という縦割りのカテゴリーを消去して、薄い板がパラパラと空中に浮遊する状態の中に人間をつれ戻そうと考えた。小さな単一のユニット(粒)を組み合わせるだけで、人間の生活にフレキシブルに対応したいというわれわれの夢を形にした。かつて人類が樹上に暮らしていた平和な状態を思い出させるパビリオン。薄い板を篏合させる一連の構造の出発点である。 Read More
ProjectsV&A Dundeeスコットランド北部の都市Dundeeのウォーターフロントにたつ、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム(ロンドン)の分館。スコットランドでは初のデザインミュージアムとなり、スコットランドの新しい文化の発信拠点となることを期待されている。 敷地はダンディーの南側を流れるテイ川に面し、建築の一部を川の中にはり出すように建てることで、川と建築がひとつに融合した新しい環境調和型建築、地形的建築のあり方を提案した。スコットランド北部のオークニー諸島の美しい崖からヒントを得て、プレキャストコンクリートのバーを、角度を変化させながら水平に積み重ね、陰影と変化のあるファサードを作り出し、自然のもつランダムネスを、建築に持ち込もうと試みた。パラメトリックデザインを駆使することで、このランダムネスに到達した。 建物の中央に水平に貫通する大きな孔、洞窟をあけた。ダンディー市の中心軸であるユニオン・ストリートと、テイ川の美しい自然とを、この「孔」を媒介して、つなげようと試みた。スコットランドを代表する港湾都市として栄えたダンディーは、20世紀、倉庫群によってウォーターフロントと都市とが分断されてしまった。その倉庫群を一掃し、街とウォーターフロント、都市と自然とをつなぎ直そうという、野心的なアーバンデザインの核として、このミュージアムは構想された。建物に孔をあけることで、都市のアクティビティが、ウォーターフロントにまでのび、都市と自然との再接続が実現し、ウォーターフロントが、歩行者のための回遊空間として復活した。都市と自然をつなぐ孔のアイデアは、日本の神社の鳥居からヒントを得た。 パネルをランダムに取り付けることで、室内にも地形のように、おおらかであたたかい空間を創造した。上に向かって広がっていくユニークな断面形状と相まって、この空間は、通常の美術館のホワイエにはないような、拡がりと開放感を獲得した。このホワイエは、アートのためだけの空間ではなく様々なコンサートやパフォーマンスにも使われ、市民の交流の中心となる、コミュニティのLiving Roomとして使われている。 Read More