負ける政治
朝日新聞の社会部長の龍沢正之さんから、参議院選挙を前にして、日本の政治についての対談をしたいというオファーがあった。慣れないことゆえに、かなりのためらいはあったが、初めて、政治というものについての発言を試みた。
龍沢さんは、京都大学の建築学科の出身という珍しいキャリアで、『負ける建築』『10宅論』をはじめとする僕の著書を読みこんでいてくれて、『負ける建築』の思想の中に、現代の閉塞した政治状況を超えるヒントがあると感じたそうである。
僕はその指摘を受けて、「抽象的に『負ける』」のではなく、「具体的に負ける」ことが、現在の建築家にも政治家にも必要なのではないかと発言した。人間や場所へのリスペクトを僕は「負ける」と呼んでいる。そしてリスペクトには必ず相手(対象)がある。相手のいない抽象的リスペクトは「負ける」とお説教をしているようで、しばしば別種のエラさや自己中心性を伴う。建築をひとつ設計することは、様々な相手(たとえば近隣住民、ユーザーや施工してくれる職人さん)と具体的につきあうことであり、それぞれの相手に「負ける」ことを意味する。その様々に具体的「負け」の積み重ねが、「負ける建築」「負ける政治」であって、上から目線で抽象的な「負け」を唱えることは、かえって「負け」から遠ざかることもある。
僕は自戒を込めてそんな想いを語った。詳しくは記事をお読みください。