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#49 July 13, 2022


負ける政治

 朝日新聞の社会部長の龍沢正之さんから、参議院選挙を前にして、日本の政治についての対談をしたいというオファーがあった。慣れないことゆえに、かなりのためらいはあったが、初めて、政治というものについての発言を試みた。

 龍沢さんは、京都大学の建築学科の出身という珍しいキャリアで、『負ける建築』『10宅論』をはじめとする僕の著書を読みこんでいてくれて、『負ける建築』の思想の中に、現代の閉塞した政治状況を超えるヒントがあると感じたそうである。

 僕はその指摘を受けて、「抽象的に『負ける』」のではなく、「具体的に負ける」ことが、現在の建築家にも政治家にも必要なのではないかと発言した。人間や場所へのリスペクトを僕は「負ける」と呼んでいる。そしてリスペクトには必ず相手(対象)がある。相手のいない抽象的リスペクトは「負ける」とお説教をしているようで、しばしば別種のエラさや自己中心性を伴う。建築をひとつ設計することは、様々な相手(たとえば近隣住民、ユーザーや施工してくれる職人さん)と具体的につきあうことであり、それぞれの相手に「負ける」ことを意味する。その様々に具体的「負け」の積み重ねが、「負ける建築」「負ける政治」であって、上から目線で抽象的な「負け」を唱えることは、かえって「負け」から遠ざかることもある。
  
 僕は自戒を込めてそんな想いを語った。詳しくは記事をお読みください。

隈研吾さんの「負ける建築」から考える政治 「小さな振動を拾え」:朝日新聞デジタル

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

ProjectsPadova Congress Centreイタリア北部の古都パドヴァの、コンベンションセンター地区の中心施設であるパラッツォ・デッレ・ナチオーニ(1951年)の建て替え。 旧パラッツォ・デッレ・ナチオーニのレリーフで飾られた正面ゲートを保存し、そのゲートによって強調された軸線は内部を貫通し、都市とコンベンションセンターの各機能 ―― 5000人収容のジョットホールと2500人収容のマンテーニャホール ―― とが、ひとつにぬいあわされる。この正面ゲートを中心にして、建物をとりまくように高さ15メートルのルーバーを並べた。ルーバーは、環境を調整するためのブリーズ・ソレイユの役割をはたし、パドヴァの旧市街のコロネードと、日本の伝統的なENGAWA空間とがかけあわされた一種の中間領域(in-between space)となっている。 パドヴァの旧市街に現存する中世の巨大建築パラッツォ・デッラ・ラジョーネ(Palazzo della Ragione)は、木造船の技術を応用した、木のドームで知られ、われわれはここでCarp (2008)という布で空中に舞うインスタレーションを行った。今回の木のルーバーは、パラッツォ・デッラ・ラジョーネの木のドームに対するオマージュで、パドヴァという街の歴史との接続でもある。 Read More
ProjectsThe CloudThe design of the "Cloud" pavilion is inspired by the Polish and Japanese tradition of wooden architecture. The pavilion is designed on the basis of an individual interpretation of traditional carpentry connections. The project is inspired by analysis of slanted locks and dovetail joints connections. The pavilion's composition is based on two groups of identical timber elements (long and short) connected with diagonal locks with an angle of 45 degrees for all connections. The installation "The Cloud" is the result of the Polish-Japanese research and workshop program carried out in the years 2020-21. by the Kengo Kuma and Associates and the Faculty of Architecture and Fine Arts of the Andrzej Frycz Modrzewski Krakow University. KKAA Design team: Kengo Kuma, Marcin Sapeta, Hossam Hesham, Tomohiro Matsunaga In collaboration with: The Faculty of Architecture and Fine Arts, Andrzej Frycz Modrzewski Kraków University Krzysztof Ingarden, prof. AFMKU / Dean of the Faculty Artur Jasiński, prof. AFMKU Structural consultant: Structured Environment Limited Consulting Structural and Civil Engineers Alan Burden (Director) Jordan Bocquillon Carpenter: Jan Pęcek Zakład Stolarski, Krzczonów, Poland Produced by: The Association for Architectural Education, Kraków Sponsored by: The Association for Architectural Education, Kraków The Kyoto ‒ Kraków Foundation Andrzej Wajda i Krystyna … Read More
Projects寿月堂 築地本店竹の野点傘にインスパイアされて茶禅の精神を空間化した。 千利休に原点があるとされている野点は、作法よりもゲストをもてなす心を一番としており、現代に茶禅の精神を息づかせ続ける寿月堂の柔軟なふるまいと共鳴している。 われわれは寿月堂のパリ店、歌舞伎座店と竹を使ってデザインしたが、3店舗目となる築地本店は野点に現れる開放性や清々しさを併せもつ自由な空間を作りたいと考えた。しなやかに曲がる特性を活かした竹の傘は掌のように広がってゲストをおおらかに包み込み、築地の賑わいにそっと忍び込む。歩道から扉を設けずにつながる店舗は野点傘の下の茶会のように人々を惹きつけ、やすらぎを与えるだろう。 Read More