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#9 June 29, 2018


これだけ旅行をしていても、めったに体調を崩すことはないのだけれども、今年のゴールデンウィークの旅では、肺炎にかかってしまい、やっとの思いで日本にたどり着いた。
 振り返ると、ゴールデンウィークの旅行で体調を崩すことはわりと多かった。旅先の各地での気候の差が、この季節が一番激しいことと関係があるかもしれない。今回は特にまだ寒い秋田から中国、イタリア、スリランカ、モロッコとまわって、気温の差に対応できなかった。

 その各地で、パビリオン作りを試みた。気候も違うし、室内、室外の場合もあるので、小さなユニットを組み合わせて、ゆるい全体を作りたいというこちらの気持ちは一緒でも、できあがったものには、驚くほどの多様性が生まれる。今回、完成チェックしたパビリオンだけみても、イタリア北部の野外彫刻公園アルテ・セラの山中に作ったものは、厳しい気候に耐えるために、58mm厚の無垢材で組んだ。一方、モロッコのラバトのビエンナーレに出品したもの(写真)は、15mm厚の合板を、モロッコの伝統的な格子細工のモチーフにインスパイヤされた鋭角的幾何学へ組み上げた。
 できあがりの印象はまるで異なり、世界の多様性を映している。しかし、体の方を、世界の多様性にあわせていくのは、そう簡単なことではない。

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

Projects木霊イタリアの環境アートの聖地、アルテ・セラの森の中で58mm厚のカラマツの無垢材を組み合わせ、金物も糊も使わずに高さ4mの球形のパビリオンを作った。単一の小さなユニットを集積させ、人間の手だけで大きなゆるい空間を獲得しようとするデモクラティックな建設方法の実験である。 ミラノ工科大学のマルコ・インペルドーリ教授、D3WOODのマルコ・クロッツァ、構造エンジニアの佐藤淳、そして木造施工会社のRi-Legnoとのコラボレーションにより、1mm単位の精度で作られたナチュラルでコンテンポラリーなパビリオンが可能となった。 Read More
Projectsブリージング大気汚染物質を吸着する機能を持つ布—―Breath——を用いて作られた、やわらかく、サステイナブルなインスタレーション。 Breath にプリーツ加工を加えることで、布の表面積を増大させて、汚染物質の吸着機能を増大させ、さらに、どんなオーガニックな形態にも対応できる、自由度を獲得することができた。 全体の形状は、Dassault Systèmesの3DCADによってシミュレートし、カーボン・ファイバーと、3Dプリントで作られたフレキシブルジョイントを併用して実現した。 インスタレーションはまず、Dassault社のイベントに用いられたが、ユニット化され、このインスタレーションひとつで揮発性有機化合物(VOCs)を、一年間に乗用車9万台分吸着できる。 Read More
ProjectsArchives Antoni Clavé20世紀のスペイン美術を代表するアーティスト、アントニ・クラーベ(1913-2005)の作品を収蔵する、プライベート・ミュージアム。 油彩とコラージュを使用するクラーベの作品の力強い質感にインスパイアされ、アルミ製のメッシュ(エキスパンドメタル)に和紙をまぶすことで、立体的でしかも透明感のある新しい質感のスクリーンを生み出し、空間のすべてを、そのスクリーンでおおった。 スクリーン製作は、新潟の手漉き和紙作家、小林康生さんが、フランス西部にある施工会社のアトリエで行った。和紙製造の過程で生まれるコウゾの繊維とトロロアオイの混じったドロドロの溶液を、エキスパンドメタルにまぶし、その溶液の濃度、乾燥方法を調整しながら、様々な透明度を獲得した。 Read More
Projects王子シェアハウス戦前の木造住宅を海外の留学生のための庭つきのシェアハウスへと改修した。外観と構造を保存しながら、8人が共同生活をする木の香りがするシェアハウスに間仕切り、障子、照明器具などを作った。和紙を全面的に用いることで空間を切断せず、やわらかくつなぐことが可能となった。 Read More
Projectsモクマクハウス豪雪地帯長岡に、雪の中の行灯のような膜と木の温かい家を作った。木造の構造体をガラスクロスを基材とする2種類の膜ではさみこむことによって、行灯のようなやわらかな質の光で室内を満たし、また雪国の風景にもあたたかい彩りを与えることができた。 Read More