東京大学工学部の11号館に、HASEKO KUMA HALLが生まれた。既存の講堂とラウンジを、長谷工コーポレーションの寄付を頂いて、全面的にリノベーションし、デザインをわれわれが担当した。
正門に一番近いという立地を生かした、キャンパスにもコミュニティにも開かれた、アクティブなレクチャーホールの創造を目標とした。ラウンジに天井壁面が一体となった大型スクリーンを設け、講堂とラウンジの連動を可能とし、「開かれた大学」にふさわしいホールができた。ホールラウンジの両スペースを、「木の巣箱」というヴォキャブラリーを使って統合し、ホワイエ部の「巣箱」には東京大学工学部の最先端の研究成果を展示して、ホールであると同時にミュージアムでもあり、ラーニングコモンズでもあるような、ゆるやかな機能複合を実現した。
ラウンジ2階に面して、「U-gohan」というカフェを、同じように「木の箱」をモチーフにしてデザインした。飲食のコミュニケーションも含めての、立体的イベントの連動が発生する仕掛けにした。HASEKO KUMA HALLは今後、建築に関わる教育、交流の場として様々に使われ、思ってもいなかったような使われ方が生まれることを期待している。
「U-gohan」の運営は、北海道の当別町の社会福祉法人「ゆうゆう」が行っている。僕は先日当別町を訪れ、彼らの農園を見てきたが、そこで働く人々の生き生きとした表情、食材の新鮮さに感動した。「U-gohan」は朝8時から21時まで営業して(土・日は10:00~20:00)、朝食、ランチだけでなく、上質のワインも提供し、学外の利用も大歓迎なので、是非、北海道の食材と木の空間を体験して頂きたい。
このHASEKO KUMA HALLをノードにして、教育と創造がつながるだけではなく、福祉までがつながっていく手ごたえを得て、吹雪の当別から、深夜東京に戻った。