KKAA Newsletter #29 (March 29, 2024) See in English 日本語で見る

#29 March 16, 2020


東京大学工学部の11号館に、HASEKO KUMA HALLが生まれた。既存の講堂とラウンジを、長谷工コーポレーションの寄付を頂いて、全面的にリノベーションし、デザインをわれわれが担当した。

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正門に一番近いという立地を生かした、キャンパスにもコミュニティにも開かれた、アクティブなレクチャーホールの創造を目標とした。ラウンジに天井壁面が一体となった大型スクリーンを設け、講堂とラウンジの連動を可能とし、「開かれた大学」にふさわしいホールができた。ホールラウンジの両スペースを、「木の巣箱」というヴォキャブラリーを使って統合し、ホワイエ部の「巣箱」には東京大学工学部の最先端の研究成果を展示して、ホールであると同時にミュージアムでもあり、ラーニングコモンズでもあるような、ゆるやかな機能複合を実現した。

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ラウンジ2階に面して、「U-gohan」というカフェを、同じように「木の箱」をモチーフにしてデザインした。飲食のコミュニケーションも含めての、立体的イベントの連動が発生する仕掛けにした。HASEKO KUMA HALLは今後、建築に関わる教育、交流の場として様々に使われ、思ってもいなかったような使われ方が生まれることを期待している。

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「U-gohan」の運営は、北海道の当別町の社会福祉法人「ゆうゆう」が行っている。僕は先日当別町を訪れ、彼らの農園を見てきたが、そこで働く人々の生き生きとした表情、食材の新鮮さに感動した。「U-gohan」は朝8時から21時まで営業して(土・日は10:00~20:00)、朝食、ランチだけでなく、上質のワインも提供し、学外の利用も大歓迎なので、是非、北海道の食材と木の空間を体験して頂きたい。

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このHASEKO KUMA HALLをノードにして、教育と創造がつながるだけではなく、福祉までがつながっていく手ごたえを得て、吹雪の当別から、深夜東京に戻った。

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

Projects明治神宮ミュージアム日本を代表する神社、明治神宮の参道の途中に建つミュージアム。明治神宮に伝わる宝物、美術品を展示するだけではなく、明治神宮の森の歴史、建築の歴史について知ることができる。 明治神宮の森自体を主役と考え、建築をその中に溶けこませることを目標とした。一見、原生林のように見える明治神宮の森は、明治天皇が亡くなった後に、全国のボランティアの手によって、持ち寄られ、植えられたものであり、100年の短期間で、野原があった場所に、これだけの深い森が生まれたことは、林学上の奇跡ともいわれている。われわれは軒の高さを抑え、屋根を細かく分節し、外壁も、大和張りと呼ばれるディテールを用いて細かく分節することによって、建築を森の中に消していこうと試みた。 構造体にH鋼を用い、可能な限り透明な空間を実現し、H鋼のフランジ間をヒノキの板で埋めることで、構造のシャープさと、空間の温かさ、やわらかさとを両立させた。建築に際して切り倒された欅、楠などの樹木は、家具や内装に再利用して、森という貴重な資源を循環させることを試みた。 *not available for publication Read More
ProjectsEndo Sushi Restaurantロンドンの旧BBC本社の象徴でもあった、ガラスのシリンダーのペントハウスに、ロンドンの夜景を一望できる特別な寿司バーをデザインした。 空間の象徴として、書道の筆の運び(brush stroke) にヒントを得た、有機的形態のヒノキ製カウンターをデザインした。このカウンターによって、職人とゲストとの間に、新しいインタラクティブが生まれ、作る行為と食べる行為とが、ひとつになる。 ヒノキは神社などに用いられる特別な木材で、その香りと人の肌のような質感によって、古代から、日本人にリスペクトされてきた。 カウンターの上部には日本の伝統的な和紙を折りたたんで作った、雲のようなオブジェクトが吊るされ、その「雲」が発する光が絶え間なく変化し続け、あたかも天上の実際の雲のようにして、ウエストロンドンの空に浮かんでいる。 Read More
Projects慶州国際博覧会記念館大地と建築との中間的な存在形式を持つ、博覧会のパビリオン。博覧会後も保存され、恒久的に使われる建築は、通常のパビリオンのような仮設的な存在ではなく、大地と一体となった、永続性の感じられるものでなければならないと考え、大地と建築をつなごうと考えた。 大地を感じられる地元産の玄武岩で、地面と建築とを連続的に覆い、展示空間は、その石の面の裏に隠されている。 石と石の隙間から緑が顔をのぞかせ、石の壁が、大地の一部であり、生命線とつながっていることを感じさせる。緑は、さらに増殖し、建物を大地へと還していくであろう。 Read More
Projects21_21 Design Sight 企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」東京都、日本 2019.11-2020.05 展覧会 田川欣哉(Takram)ディレクションの21_21 DESIGN SIGHT企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」に、われわれの設計プロセスの㊙の部分を、スタディモデルやモックアップを使って展示した。高輪ゲートウェイ駅がfoldという操作の徹底的な追究であったことを振り返ることができ、そのfoldが、Dassault社とのコラボの布につながったことを展示した。プロジェクトは単独の存在ではなく、連鎖であり、思考の継続であることを、知ってもらいたかった。 約300枚の隈自筆の手書き原稿で什器を作り、高輪ゲートウェイ駅とBreath/ng(インスタレーション)の模型・スケッチをその上に浮かぶように展示した。 2121designsight.jp Read More
ProjectsKithul-Amiスリランカの建築家、ジェフェリー・バワ生誕100周年を記念するパビリオンのデザインを依頼された。現地で伝統工芸品に多く使われるキツルという蔓植物を用いて、バワの建築の持つやわらかさに迫りたいと考え、またスリランカの自然を代表する植物を用いることによって、スリランカの自然と文化からバワという個性が生まれたことを具体的に示したいと考えた。 制作においては、スチールメッシュとキツルとを組み合わせることで植物の質感を持ちながら耐久性のあるパビリオンを作ることができた。形態的には、鋭角的なもの、直線的なものを可能な限り遠ざけ、ひとつながりのリボンのような形状を用いて、ゆるやかな求心性を持つ、人を包み込むようなモニュメントを創造した。形態の決定に関しては、直線状の展開面とすることが施工上の前提条件となった。Kangarooという物理シミュレーションソフトを用い、メッシュをばねとして演算することで立体形状を逆算し、この流動的なしなやかな形態に到達した。 Read More
ProjectsBamboo Ringロンドンデザインフェスティバルのために作られたパビリオンである。割竹に炭素繊維シートを貼り合わせて作られたしなやかさと剛性を兼ね備えた竹・炭素繊維複合材料を使い、一端を空中に持ち上げられたドーナツ形状の構造体を設計した。 複合材料で作った直径約1.8mのリング120個を交差させながら、結束バンドで全体の構造を編み上げている。竹という伝統的な素材と炭素繊維という最先端の素材を組み合わせることで、6人程度で全体を持ち上げられるほど軽量で透明な構造体が実現できた。 Read More