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#31 July 6, 2020


評論家の東浩紀さんと、6年ぶりにニコナマでトークをした。建築家の藤村龍至さんを交えての鼎談という形をとって、拙著「点・線・面」を糸口にして、コロナ後の状況まで語り合った。

東さんの指摘でおもしろかったのは、ヴォリュームを「点・線・面」に解体すると隈はいっているけれど、やはり本質は「「線」の建築家」なのではないか、というコメントであった。東さんは、インターネットもコンピューターも基本的には線であり、なにかとなにかを線でつなげることが、今という時代の本質だというのである。この画面は面と見えるけれども、その裏につながっているものを考えると線の集合体だというのである。

そこまで線という概念を拡張していくと、確かにモノと場所を、情報という線でつなげるというわれわれの方法は、世界に線をひくことそのものであるという気もした。それは、世界の中にヴォリュームを確保することが目的であった20世紀とは、対照的な方法と呼びうるだろう。

もうひとつ面白かったのは、東さんが現代の象徴的行為としてあげている、トランプのツイッターである。

トランプは、アメリカの大統領という特権的ポジションにありながら、ツイッターというフラットなコミュニケーションを駆使している。KKAAにとってのパビリオンは、ツイッターかもしれない。時に、KKAAはパビリオンよりも、もっと小さなものを使って発信を行う。小さいものと大きなものを、パラレルで進めるというわれわれの方法は、今まで村上春樹の小説論を採用して、短編小説と長編小説を行き来することが、創造性を増殖させるために必要だと説明してきたけれども、東さん流にヒエラルキーのある世界の中に、SNS的なフラットな方法の挿入法とも、説明できる気がした。

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

Projectsさかい河岸レストラン茶蔵日本ではじめて、海外に茶を輸出したことで知られる、「さしま茶」の産地、茨城県境町に、茶をテーマにして、利根川の河岸に町営のレストランをデザインした。 まず県産材の杉を用いて、茶を育てるプランターをデザインし、そのプランターが角度を変えながら、有機的な流れのあるファサードを構成し、そのファサードを隣地にある既存の道の駅へと延長した。単体の建築を超えて、河岸に沿って蔵が並んでいた街並みのリズムの再生を試みた。 レストラン内部では、「さしま茶」の古い茶箱を積み重ねてカウンターや壁を構成し、「さしま茶」で染められた緑色の布を、天井から吊ることによって、茶という植物の持つやわらかさとさわやかさを、空間に導入した。 Read More
Projects高輪ゲートウェイ駅東京の環状鉄道、山手線の新駅で、山手線30番目の駅となる。2020年のオリンピックにあわせて開業し、13haの駅前の敷地に計画が進められている「新しい街」と一体となって、東京の新しいゲート、海と陸とをつなぐ新しいゲートとなることが期待されてこの駅名となった。 街と駅とをシームレスにつなげることを目的として、駅の上に、膜構造の大屋根を架け、膜は鉄骨と杉の集成材で作られた折り紙形状のフレームで支えられている。 駅構内は、従来の駅と異なり、天井も高く明るく開放的な空間が出現した。木のフレームと白い膜の組み合わせは、和紙を用いた日本の「障子」を想起させるものとなった。 壁面には、木の板を凹凸をつけて貼る、「大和張り」と呼ばれる伝統的技法が用いられ、それによって従来の駅舎にはないようなヒューマンスケールで温かい空間が出現した。 *not available for publication Read More
Projects見城亭金沢の名園、兼六園の茶店通りに建つ茶店のリノベーション。北陸の民家を大雪から支えてきた「指物造り」の方法を用いて既存の建物を補強し、木のフレームが飛び交う大きな闇をデザインした。かつてこの場所にあった江戸町武家屋敷の豊かな闇を感じさせるような素材で内装を仕上げ、その闇の中に金箔貼りの照明器具を浮遊させた。小屋組み部分の補強に炭素繊維ロッドを使用し、石川県の新旧の技術を複合させた。 Read More
Projects慶州国際博覧会記念館大地と建築との中間的な存在形式を持つ、博覧会のパビリオン。博覧会後も保存され、恒久的に使われる建築は、通常のパビリオンのような仮設的な存在ではなく、大地と一体となった、永続性の感じられるものでなければならないと考え、大地と建築をつなごうと考えた。 大地を感じられる地元産の玄武岩で、地面と建築とを連続的に覆い、展示空間は、その石の面の裏に隠されている。 石と石の隙間から緑が顔をのぞかせ、石の壁が、大地の一部であり、生命線とつながっていることを感じさせる。緑は、さらに増殖し、建物を大地へと還していくであろう。 Read More