KKAA Newsletter #40 (March 28, 2024) See in English 日本語で見る

#40 June 1, 2021


 恩師である内田祥哉先生が5月3日に、96才で亡くなられた。2年前の僕の東大最終講義で対談して頂いた時は、あれほどお元気で、立ったままで長いレクチャーをされたので、いまだに信じられない。 

 内田先生から僕が教わったことについて、あるいは建築教育における内田研究室の役割については、最終講義をまとめた「くまの根」(東大出版会、2021年5月17日初版)を是非読んで頂きたい。

 内田先生は、戦後の日本建築の、工業化のリーダーであると同時に、最大の批判者でもあった。建築の規格化、プレハブ化で、日本が世界のトップを走ることができたのは、内田先生の力による。しかし同時に、工業化が建築と人間を遠ざけ、非人間的な都市を作ることの危険に対して、内田先生は警鐘を鳴らし続け、具体的に活動し続けた。

 内田先生は後半生において、日本伝統木造の復活の旗振り役をつとめた。僕が内田先生と最初に出会ったのは、東大の教養学部の建築の講義であったから、1973年、僕が18才、先生が47才の時であり、先生にとっては、丁度、転換点の頃だったかもしれない。1973年の日本は高度成長から低成長への転換の時だった。まさにその時機に、内田先生と出会ったことが、僕にとっては、とてもラッキーなことだと思う。僕は内田先生から工業化について学び、同時にそれにたいする批判的視点を教えていただいたのである。僕のその後の方向を、1973年の内田先生が定めてくれた。

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

Projectsところざわサクラタウン 角川武蔵野ミュージアム世界でも類を見ない、4枚の地殻プレートの衝突によって生じた武蔵野台地・所沢に建つ、デジタルプリンティングの工場、コンピューター制御の新しいタイプの物流倉庫、オフィス、美術館、図書館、博物館、アニメホテル、アニメ文化と連動する神社が有機的・横断的に撹拌された複合施設。武蔵野の台地が隆起して出現したかのような角川武蔵野ミュージアムは、外壁に黒と白の斑が入り混じる、70㎜もの厚みの花崗岩を2万枚用いた。花崗岩は表面を割れ肌仕上げとし、隣り合う石のジョイントには通常行われるような凹凸を揃える加工はせず、割れてできた凹凸のまま段差を残すことで、大地の力強さと1枚の石がそれぞれ独立して浮遊するような軽快さを達成した。巨石の内部は現代アートのようなハイ・カルチャーとアニメのようなロー・カルチャー、モノとコトが撹拌され、従来の二項対立を超越した未来的迷宮としてデザインした。構造用合板による霞棚のような本棚が、脳の構造のように縦横無尽に展開し、さまざまなジャンルの書籍やオブジェを立体的に繋ぐ。巨石を磐座とし、石の荒々しさとの調和を図った、製造・オフィス棟の、目の粗いアルミエキスパンドメタルのフェンスで囲われた境内をもつ武蔵野坐令和神社は、流造りと妻入りが共存し、女性の神を示す内削ぎと男性の神を示す外削ぎが併置され、ここでも混在と撹拌を生じさせ、地域対文化施設を超えた、コロナ時代の新しい場所の創造を試みた。 Read More
Projects東京エディション虎ノ門「森にいるようなintimateな空間」を目指し、自然素材をふんだんに用いてゲストに温かく寄り添うホテルをデザインした。  オーク、ウォルナット、和紙、ライムストーンなど、各空間によって使用する仕上げ材を一変させることで、日本初上陸のEDITIONにふさわしいシンプルで洗練された空間を創造した。  EDITIONのアートディレクターであるイアン・シュレーガー氏はスタジオ54、パラディアムなどのプロジェクトによってニューヨークの夜を一変させたといわれる伝説のプロデューサーであり、彼と21世紀の東京のいく先を議論しながら、従来の東京にはない、あたたかく、シンプルな「リビングルーム」が生まれた。 Read More
Projectsオポジットハウス 10周年リニューアルKKAA設計のホテル、オポジットハウスが10周年を迎えるためのリニューアル設計。主要な改修点は、ロビーのフロントの位置を移動し、ミニマルな石のカウンターの背面を、タイベックシート製の折り紙形状のバックリットの壁にしたこと。 折り紙のデザインについては、単位となる粒子の寸法と、プラスチックの裏打ちによる工法で長年持つよう耐久性に注意を払った。 その他カーテンや照明に関しても、折り紙がモチーフになっている。布や紙などのやわらかい物と、建築という固いものをインテグレートするために、固い建築はやわらかく、やわらかい布は折り目をつけて少しだけ固く、という方法を採用した。 Read More
Projects竹田市城下町交流プラザ城下町竹田の中心部に、焼杉と竹を使って市民交流施設をデザインし、城下町の歩行ネットワークのノードの機能を与えた。建物全体を前面の広場に面する屋外ステージとしてデザインし、竹を立体的に組み合わせたプロセニアムアーチは、イベントの背景として機能するだけではなく、現代と歴史が融合する新しい竹田を象徴する。 Read More