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#48 June 8, 2022


 2年半ぶりに、海外を旅した。ニューヨークで緑の中にたつ吉村順三建築を訪ねてからサンフランシスコに飛び、日本で3日間過ごしてから、ヨーロッパの5か国をまわった。打ち合わせと敷地視察の要望がたまりにたまっていたので、このようなタイトな旅程になった。

 コロナの2年半は、日本という限られた場所に合わせて、新たな生活のリズムを作った。北海道や沖縄など、生の自然を直接感じられる場所に新しい拠点ーサテライトオフィスーがいくつか生まれ、そこで自然と接し、自分というものを見直すチャンスを得た。東京でも、つとめて歩くことを心掛け、自分の身体を、少しだけ狩猟採集民的に改造できたような気がする。

 そうやってちょっとだけ狩猟採集生活に戻り、野性化した身体が、飛行機に乗るとどんなことになるかが、少し不安だった。とりあえず、体の不調もなく、敷地を訪れ、ミーティングを重ねて戻ってこられたのは、現地でたくさん歩くことを心掛けたからだと感じる。原野に近い「野性」の敷地を汗だくになりながら歩いただけでなく、街の中でも可能な限り歩いた。なぜか僕には「野性」の敷地が与えられることが多い。そのような「野生」を求めるクライアントが次々と訪れる。コロナをきっかけにして、「野性」にとび出していこう、世界じゅうのいろいろな人が考え始めたのを肌で感じた。僕も部屋にこもって考えずに、歩きながら考えることにした。激しく歩けば、コロナ時代に身につけた狩猟採集と、飛行機という鳥になり道具を、上手に組み合わせられるかもしれない。

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

Projects横浜インターナショナルスクール新校舎計画1924年開校の、世界で2番目に古いインターナショナルスクールの新しい校舎を「木の家」としてデザインした。廊下や通路のような動線空間を極力作らずに、オープンハブと呼ばれる多目的なリビングルームを媒介として教室や特別教室、スポーツ施設をゆるやかにつないだ。それらの中心に太陽光が射し込む中庭のようなアトリウムを配置し、その中心となるLily Pads(睡蓮)と呼ばれる象徴的な大階段は、授業をはじめとする様々なパフォーマンスのステージとしても機能する。 傾けた木製パネルによって分節されたファサードは、プラントボックスとインテグレートされ、「木の家」にふさわしいヒューマンでやわらかい表情をかもしだしている。港を見下ろす屋上には和室と日本庭園が設けられ、本校の教育のテーマである多様性の尊重、日本文化へのリスペクトが体現されている。 基本設計・デザイン監修:隈研吾建築都市設計事務所 実施設計:大成建設株式会社一級建築士事務所 Read More
Projects草津きむらや群馬県の名湯草津温泉に設けられた一部屋だけの旅館。目の前の草津の名物湯畑に面した1階はレストランとなっている。湯畑にころがる浅間石をそのまま外壁に用い、ランドスケープの立体化を試みた。 湯畑から立ち上あがる湯気を思わせるカーブのジオメトリーに基づいて、現地のマテリアルを配置し、風景との調和を試みた。各階のインテリアにも浅間石のテラゾーや石を砕いてすきこんだ和紙を配置し、湯畑の床に使われている瓦材は水廻りに使用した。 建築全体に湯畑の物質とジオメトリーを散りばめ、歴史ある草津町の素材感を小さな建築の中に凝縮した。 Read More
Projects雫雫 – 香籠日本古来より続く和の美意識やライフスタイルを世界に発信することを目的に、隈研吾を中心として「雫雫」ブランドが立ち上がりました。 その最初の作品として「香籠(こうろう)」を制作、3月10日-13日の日程で東京にて開催されるアートフェア東京2022に出展し、その後オークションに出品いたします。 コロナ禍において様々な自由を奪われた今、美しい記憶に色彩を与え、心に安らぎを与えてくれる香りの大切さを再認識し、日本の5つの場所(東京/京都/軽井沢/富士山/沖縄)からインスピレーションを得て作った5つの香りと、それをまとう自然への敬意を表現したアートピースを作りました。 雫雫 香籠の詳細については特設サイトをご覧ください。 szkszk.com Read More