KKAA Newsletter #46 (April 26, 2024) See in English 日本語で見る

#46 February 21, 2022


 五十嵐太郎、菊地尊也編で刊行された「現代建築宣言文集1960-2020」(彰国社)に、僕の文章が2篇収録された。磯崎新さん、槙文彦さんが3篇、黒川紀章さん、菊竹清訓さんと僕が2篇で、他の建築家達は1篇なので、建築プロパガンダ50篇の歴史の中でも、それなりの存在感が示せたことが、とりあえず嬉しかった。

 僕の2篇のうち1篇は「反オブジェクト」(2000)のために書きおろした「粒子へと砕く事」であり、ここでは、その後(2000年以降)のKKAAの方法論をかなり早い時機に簡潔にまとめながら、ビアトリス・コロミーナのメディア論、ドゥルーズの物質論ともつながっていて、スピード感がある。

 もう1篇は、新建築の2006年4月号の巻頭に書いた「パドックからカラオケへ」である。住宅設計という行為を神話化してあがめたてまつる日本の建築文化を笑いとばした「10宅論」(1990、ちくま文庫)は、僕の物書きデビュー作であるが、それ以来、この手の建築界批判、建築家批判を、時々書き散らかして、ストレス発散してみたくなる。この「パドックからカラオケへ」は、その手の文章の集大成とも呼べるもので、今でも思いっきり笑えるし、同時代批判としては、現代でも通用するだけの鮮度を保っているように感じた。

 同時に、その状況がコロナ後にどう変わるのだろうかとも考えさせられた。建築家はいつのまにか、社会に通用する理念と技を持つプロの歌手ではなくなってしまい、歌好きのオニ―チャンになってしまったという今日的状況は、さらに進化したかもしれない。しかし、今、コロナでカラオケができなくなってしまっているように、コロナは建築好きのオニ―チャンが歌う場所さえ、うばってしまうかもしれない。

Kengo Kuma © Onebeat Breakzenya

Projectsふふ奈良奈良を代表する景観のひとつである鷺池と浮見堂の南向かい、奈良公園の一角にたたずむスモールラグジュアリーホテル。 歴史を紐解くと、この地は中世から続く寺院遺構を活かして庭と茶室が作られ、大正期の文化人が交流する場であった。その根底には庭と建築を一体とみなし、自然を敬い人為を尽くして、来訪者と心を通わす「庭屋一如」の精神があった。われわれも計画地全体をひとつの庭と見立て、「庭屋一如」の精神を現代へ継承した。 春日山原生林と奈良公園をつなぐ敷地には、もともとクスノキ等の樹木群や鬱蒼とした竹林が野趣あふれる植生を形成していた。傾斜地の上側に位置する宿泊施設と下側の鷺池のほとりにある飲食施設で庭園を挟み込むことで、この森を最大限保存した。 建築は既存樹木をよけながら雁行し、高さを抑えた甍の集まりとしてデザインした。緑青に発錆した銅板と瓦の腰葺き屋根が樹林の深い緑と馴染み、軒下に吉野杉による大和張りや格子を用い、すべて墨を基調とした陰影を湛える表情とすることで、建築は竹林の背景として沈み込み、庭を引き立てている。 Read More
ProjectsStudent Dormitory Grand Morillonこのコンペでは、700床の学生寮にくわえて、アパートメント、共用キッチン、ランドリー、スポーツ施設、図書館、学習エリア、カフェテリアなどの多種多様な公共的な機能が要求された。 これをうけてまずは地上階に公共性の強い機能、上層階にアパートメントの機能を付置しゾーニングにグラデーションを持たせることにした。そして、建物のヴォリュームをそれに並行してはしるプロムナードで地上階から屋上まで繋ぐことによって、エレベータに大きく依存した通常の垂直的なプログラムの解体を試みた。 すべてのフロアに歩行者がアクセスできるよう、このプロムナードには必要とされるすべての公共的なプログラムが併存している。歩くことを重点におき、住む人同士の出会いを誘発するライフスタイルをかたどった建築が実現した。 出自の異なる数百人の学生たちが共同生活を営みコミュニティーを形成する助けとなることを望んでいる。 Read More
Projects登米懐古館宮城県登米市登米町は仙台藩の城下町として知られ、江戸時代の武家屋敷の続く街並みが、再生されつつある。その武家屋敷通りの一角に計画された、登米の歴史と武家文化を展示する博物館。 博物館を小さなヴォリュームへと分割することで、武家屋敷独特のヒューマンスケールの再生をめざした。 ひのきの皮を用いた「Hiwadabuki」と呼ばれる屋根の上に、時の経過とともにコケが生え、緑になっていく様子にヒントを得て、地元の石で葺かれた屋根と、緑化ルーフとを組み合わせた。 Read More
Projects渋谷スクランブルスクエア渋谷駅の上部の、新しい「複合都市=渋谷」を象徴するタワー、渋谷スクランブルスクエアのデザインにたずさわった。 歩行者、3本の鉄道、高速道路、水路等のさまざまな動き、流れの交差する場所に建つタワーを、それぞれの流れの速度と質にレスポンスするように変形させながら、大地へとやわらかく着地させた。 流れに呼応するようにヴォリュームを切除、膨張させ、カーテンウォールのマリオンのデプスを操作した。さらに、通常ガラスの内側に施されるセラミックプリントをガラスの外側に施すことで、ガラスに対して、従来とは異なる立体的な表情を与えることができた。首都高に面する南面では、グラデーショナルな壁面緑化を施し、ランドスケープとタワーとの有機的結合にチャレンジし、最上階には東京を見下ろす木のデッキが出現した。 若者の街と呼ばれる渋谷のスピードと流れのダイナミズムが感じられる、新しい超高層が出現した。 Read More
Projects京都”湯道”パビリオン京都のお寺の竹林の中に、テンポラリーな布のパビリオンを浮かべた。フラットな防水シートを立体的に織り、この「布の建築」の下に浴槽を置いて、ろ過された光の中で湯と戯れる、半屋外の露天風呂とした。ひとつの単純な平面を立体的な「建築」へと変身させた。 周囲の生きた竹を、布を支える支柱とする方法は「負ける建築」そのものであり、風の吹くままに白い布も揺れ動く。 Read More