UCCA 陶美術館
紫泥を用いた陶器の生産地として名高く、「陶都」と呼ばれる宜興市に、陶文化を展示する美術館をデザインした。敷地はかつて陶器工場やアトリエが建ち並び、宜興の陶文化の中心地であった場所で、再開発のマスタープランに沿って、稼働を終えた工場の遺構を生かしながら、アトリエ、ワークショップを含む陶芸文化のセンターを創造した。
陶器の山のようなヴォリュームは、北宋時代の文豪・蘇東坡が愛した敷地に近い蜀山や、600年間現役で使われている龍窯(登り窯)にインスパイアされた。その山の形のヴォリュームに陶器工場や運河と繋がる孔をあけ、敷地の軸線や工場群とをシームレスに繋いだ。仮想の球面によって削り取られた逆シェル構造の屋根は、四重の木造格子梁によって支えられ、軽やかで力強いこの木造梁は内部空間にダイナミックな変化をもたらすとともに、視線や動線を奥へと引き込んでいく。
マニファクチュアで陶器の「温度」を感じられるファサードは地元の職人と共同で開発した。表面には凹凸や釉薬によるグラデーショナルな色の変化を施し、時間や季節に合わせて様々な表情を生み出す。中国茶器のように温かみがあり、僅かにザラザラとした土の粒子の手触りが残るこの陶板は、1000年以上綿々と受け継がれてきた陶都の歴史や文化を体現している。