©Marco Introini

イタリア 2010Ceramic Cloud

レッジョ・エミリア
モニュメント
竣工

イタリアのレッジョ・エミリアにあるセラミックタイルメーカー、カザルグランデ・パダナ社のためのモニュメント。この地域特有の美しい草原風景の中で、タイルを単に仕上げ材として使うのではなく、それ自体を構造体として用いることで薄さや繊細な質感など、タイルそのもののマテリアリティーが周囲に融けこむことを目指した。

材料試験によりタイルに十分な面剛性があることがわかり、それを利用した架構をカザルグランデ・パダナと共同で開発した。具体的には600mm×1200mm、厚さ14mmのタイルを、最大限に孔を確保するよう立体的に積み重ね、それらを端部でステンレスの柱が繋ぎとめるといった組積造とラーメン構造の中間に位置する形式である。タイルの面剛性が柱の座屈補剛と水平剛性を高めるため、柱は直径20mmの華奢なものとなった。また角度を変えながら千鳥状に配置することで、高さ5.4m、長さ45mの極端に細長い形状でありながら全体として高い剛性と耐力を持つ安定した架構となった。

レッジョ・エミリアの草原の中にあるロータリーに立つモニュメントはハイウェイで近づく車からは薄い垂直の線として見えるが、ロータリーを回るときに線は全長45mのポーラスな壁に姿を変える。1052枚のタイルが放つ圧倒的な存在感の壁は角度のついた孔のパターンにより、見る位置や時間によって刻々と変化していく。

数ヶ月の工事の間、少しずつ出来上がっていくこのモニュメントを見て、その構造の透明性、周辺環境や天候に敏感に反応する繊細な輝きに驚かされた。柔らかく、軽やかな、そして刹那的なこの体験を“Ceramic Cloud”と名づけた。

チーム ビヤール ルイズ ハビエル、梅澤 竜也* パブリケーション GA JAPAN 109 写真撮影 ©︎ Marco Introini