©Kengo Kuma & Associates

イタリア 2009Con/Fiber (コンファイバー)

ミラノ
展示
竣工
9

もっとも原始的な建築の作り方として組積造がある。通常、構造の条件から可能な位置に限られた開口部をつくり、外光を取り入れるので、内部には光のコントラストのきいた空間ができる。障子でぼんやりした光を取り入れる日本の軽快な木造建築とは対極にある。本プロジェクトでは、物質としての重量感を持ちつつ、同時に透明性のある両義的な空間を生み出す、新たな組積造を考えた。

使用したのはLUCCON Translucent Concreteという素材である。LUCCON Translucent Concreteは、それ自体は高強度のコンクリートでありながら、中に埋め込まれた無数の光ファイバーを通して光を透過する。見ただけでは硬い石のようなテクスチャーを持っているが、光をバックにすると光ファイバーの束を透過して光、影、映像などをプロジェクションするスクリーンになる。重厚な物質感と映像メディアという両義性を備えるところに惹かれた。

この素材の性質を最大限に利用するために、ショートケーキ型ブロックをデザインした。ショートケーキの尖角の先端を内側に向けることで、外部からの光が1.8倍の倍率で増大されて内部へ導入される。ショートケーキ型で生まれる外部と内部の表面積差の効果が得られる。さらにブロックが積まれたときの内部はヒダ状の凹凸をもったスクリーンになって、光や映像が新たな立体的なパターンとなって現れる。この透明な組積造は、壁や屋根そして窓といった従来の概念をくつがえす。

チーム 神谷 修平*、平辻 里佳* 施工 LUCCON パブリケーション 新建築 2009/07 、日経アーキテクチュア 2009/06/08 No.901 写真撮影 ©︎ KKAA