KXK (Krug X Kuma = ∞)
シャンパンメーカーのイベントのために計画された、世界中に移動可能な仮設のパビリオンである。建築という形の変わらない固定されたもののイメージから、可能な限り遠ざかりたいと考えた。直径2mmのヒモ形状の樹脂がからまりあってできたEVAシートと呼ばれる、きわめて柔らかい膜材を選択し、その膜材が形状記憶合金でできた骨組によって支持されている。形状記憶合金の直径も2mmであり、骨組というよりは、膜材と同化させ、皮膜対骨組という二項対立を可能な限り無効化したいと考えた。形状記憶合金は温度の変化によって形態を変えるので、ドーム状の全体形態自体が様々に変化する。その変化する動きは、建築的というよりは、生物的でさえある。最終的には冷却によって合金の剛性を喪失させ、小さな容器の中にドームを折り畳んで収納することが可能であり、そのようにして、このパビリオンは世界中を旅していく。