日本 2021Kura
富山県立山連峰の裾野、山と里の交点に、フランスのシャンパンの技と日本の酒造りの交点となる酒蔵をデザインした。
「シャンパンの博士」と呼ばれるリシャール・ジョフロワと隈との長い友情と、リシャールの日本酒への愛情と敬意が、シャンパンの酵母と日本酒の酵母を掛け合わせるという画期的なプロジェクトへとつながった。
砺波平野の農家のゆったりとした大屋根にヒントを得たミニマルな屋根形態を保ちながら、その下に酒蔵の生産機能・交流機能・宿泊機能を有機的に融合させた。
土間と呼ばれるもてなしの空間、タンクが並ぶ貯蔵室を地面に掘り込むことで、大地の安定した温度環境を設備的に利用し、心理的にも大地との一体感がもたらされた。蔵人や関係者が仕込み時期に宿泊する宿舎は酒造りの部屋と隣接して配置され、物を作るという作業と生活との一体化を体現する。
富山の神社の杉、階段手摺に巻かれた県産牛の革紐や、隣接する田で収穫された米・もみ殻・土を混ぜ込んだ和紙などの、地域の材料と工芸も、土地と建築をつなぐ役割を果たした。