青井の杜国宝記念館
茅葺きの国宝神社建築、青井阿蘇神社の横に、社務所、ミュージアム、地域の交流の場である畳の大広間を複合した参集殿を新築した。
繊細な組物の上に、突如原始的、古代的な茅のかたまりを載せた社殿の圧倒的な迫力に対抗するために、不燃処理をほどこした木製のルーバーを用いて、茅葺きの隙間の多いざっくりとしたリズム、屋根のわずかなムクリに、現代のヴォキャブラリー、技術を用いて挑戦した。われわれが広重美術館以来つみ重ねてきた、ハゼ葺きの金属屋根の上にルーバーのレイヤーを重ね合わせる構法は、茅葺のポーラスでやわらかな質感を現代によみがえらそうとする時、様々な可能性を秘めていると感じた。
大屋根を支える柱には、宮崎県狭野神社の狭野杉の樹齢400年の倒木を用いた。国宝の社殿とほぼ同年齢の大木であった。
着工直前に、記録的な豪雨が人吉をおそい、球磨川の濁流は神社の前の禊橋の欄干をすべて押し流し、社殿も床上浸水し、すべてが白紙かと覚悟した。しかし福川宮司、地元の人々の驚くべき復興への熱意によって、ほぼ計画通りに建物を完成することができた。