フランス 2013マルセイユ現代美術センター
アートの地域分権を目的として、1982年に設立されたFRAC(Fonds Régional d’Art Contemporain)のプロバンス・アルプス・コートダジュール地域での拠点施設。FRACは、若いアーティストの育成、新しいアートの創造を目的とする地域密着型の組織であり、本計画もFRACの理念に従い、従来の閉じた箱としての美術館に代わる、地域に開かれた建築をめざした。
敷地はマルセイユのウォーターフロント地区に位置し、2つの道路に囲まれて、三角形の特徴的な形状をしている。閉じた箱状の展示空間を作るのではなく、マルセイユ独特の狭い路地がそのまま立体化して、その立体化された道路そのものが、展示空間として使用できるという計画とした。コルビュジェはマルセイユのユニテ・ダビタシオン(1952年)で同じように路地の共同化を試みた。われわれは、スパイラルという新しい概念を用いて、三次元の路地を表現しようと試みた。コーナー部分と、通り隣地に面して空中テラスを設け、テラスそのものが屋外アートの制作、展示、さまざまな会合、パーティにも使われる、多目的空間と位置づけた。
外装には、エナメルガラスを用いて、粒子が集積したようなやわらかなファサードに挑戦した。エナメルガラスのパネルは、それぞれが微妙にことなる角度でとりつけられ、地中海の強い光を、細かい粒子へと分解する。コルビュジェは、ブリーズ・ソレイユで光の問題を解決しようと試みたが、われわれは粒子を用いてその問題を解決しようと試みた。「壁のない美術館」とはアンドレ・マルローが1947年に提唱したアイディアだが、われわれはこの「あいまいなファサード」を用いてマルローの試みを継続しようとした。