日本 2009ガーデンテラス長崎
プログラム構成上必要とされた、大きな箱、小さな箱、リニアなものという全く異なるヴォリュームをいかなる共通のアイデンティティで統合するかが、われわれの課題となった。そのアイデンティティとは、箱であり、しかも屋根でもあるという両義性であり、もうひとつは、木という自然素材で「作られた」-覆われたではなく- 建築というアイデンティティである。
最も大きなヴォリュームをもつ本館では、両側壁として立ち上がってきた壁が頂部で屈曲(inflection)として屋根へと変質している。屋根の下はソリッドではなく、細い柱とガラスの小箱からなるヴォイドとして解いているので、屋根性を高めること、すなわち全体としての両義性を高めることが可能となった。
もうひとつの「木で作る」ことに関していうと、巨大なヴォリュームにただ外壁や内装に木をたくさん用いれば木で作った建築になるわけではない。木という自然素材が宿命としてもつその小ささと、大きなヴォリュームとの間のギャップが大きすぎて、その木でその大きさが作られたようにはならない。そこで、木をパネル状にしてヴォリュームと木との中間的なスケールを創出した。この中間的スケールの木パネルで、大きなヴォリュームを構成することで、全体が木で「作られた」と感じられるのである。そのパネルのコンポジションと、窓のコンポジションとを連動するために、窓の大きさ、配置をランダムに導入し、開口部、パネルを含んだ単位、粒子が、建築全体を「作っている」という身体感覚を生み出した。