日本 2022歓成院庫裡・客殿
隈研吾が生まれ育った家のある横浜、大倉山のふもとに建つ真言宗の寺院である。築100年を越える本堂の脇に、深い軒を持つ庫裡・客殿を再建した。
木造でありながらも、合板によるラティス構造により7m奥行の軒下空間を実現した。人々が集う軒下空間は、地域コミュニティの中心としての役割を果たしてきた寺の象徴である。勾配が徐々に変化する60×150のスギ集成材ルーバーは、軒下空間を膜のように包む。伝統木造建築の様式を持つ本堂の化粧垂木をヒントに、現代的な構造と柔らかさを兼ね備えた、新しい軒下空間をデザインした。
室内では、大倉山特有の傾斜地盤に沿って床レベルを変化させ、高床式の本堂へとスムーズに繋がるサーキュレーションを作った。パブリックなロビー・広間は、和紙と木桟を用い、障子で包まれたようなやわらかで軽やかな空間を作った。室内の集いの場である広間は、下部に開口を限定し、宗教空間にふさわしい厳かで静寂な場を目指した。2階の間仕切り壁を巨大な壁梁として利用し、10mを無柱でとばしている。