日本 2007鉃の家(鉄の家)
3.2 mm厚のコルゲートの鉄板を用いて、柱梁のない、鉄道の貨車のようなモノコック構造の家を作った。クライアントである廣瀬教授は子供の頃からの鉄道の熱烈なファンであり、家の中には数千台の鉄道模型が保管されている。彼も貨車の中に暮らすような生活をのぞんでいた。L字形の特殊な敷地形状に合わせて、細長い貨車がL字形に折れ曲がって坂道に停車したような姿の家となった。
鉄道の車体はそもそもは構造体+皮膜という設計思想に基づいてデザインされていたが、今日では構造体と皮膜という区分は消え、より合理的で経済的なモノコックの考えに基づいて設計されている。その意味でもこの家は鉄道と建築との中間的存在といえる。
鉄板を折り曲げる事で強度を上げるのが、この建築の構造の基本的な考え方である。曲げた鉄板に内側から断熱材を吹きつけ、そのさらに内側に透明なプラスチックパネルを立てることで、室内からも曲げた鉄板の力強さを手に取るように見られるデザインとした。そのようにして物質(鉄)と人間とのダイアログを喚起しようとした。