中国 2010三里屯 Soho
「塔の村」のようなものを作りたいと考えた。複数のオーガニックな形状の塔が群れて立ち並ぶ風景、すなわち群塔を作りたかっただけではない。複数の塔の間に生まれる「谷の空間」の可能性について、そのような塔が都市の中にどのようなアクティビティを誘発するかについて考えてみたかったのである。すなわちオブジェクトとしてのひとつの塔のデザインから、その隙間の空間に、その隙間を流れる、光、風、人のデザインへと、都市における建築デザインの可能性を拡張、あるいは反転しようと試みたのである。
そのために、塔ひとつひとつのアイデンティティを消去して、逆に谷の空間にアイデンティティを与えた。まずすべての塔の高さを100mに揃え、すべての塔の表層のテクスチュアに同一の粒子感を与えた。具体的には、従来の超高層ビルの表層を、統御するための手法―横連窓、縦連窓、規則的ポツ窓(punched window)―などを採用せず、表層を細長い粒子のランダムな集合体へと還元した。表層を粒子の浮遊する状態へと還元する試みを、われわれは低層の建築の中で一貫して追求したが、今回はそれを高層建築へと展開し、さらに単体の表層から、群の表層へと拡張したわけである。