日本 2009下関市川棚温泉交流センター 川棚の杜
温泉街の活性化を期待される観光交流施設である。敷地が山裾に位置し、街と自然の中間的な領域に位置していることから<自然を抽象化した建築>のあり方を選択した。地形的なボリュームは大小さまざまな三角形で構成され、抑揚のつけ方で周囲の建物や山とのボリューム感の調和を図っている。三角形同士が支え合い大空間を無理なく覆う構造の基本システムになっている。複雑な多面体が作り出す陰影に加えて各面にかすかに異なった3色の塗り分けを施すことで、一日の中で多彩な表情を持つようにした。
機能は、観光案内、民俗資料館、多目的ホールの複合が求められた。環境の連続性を建築内部にまで導くため、諸機能を明確に分離するのではなく、機能のまとまりを床のレベルでつくりながら全体をひとつながりの空間にした。屋根形状は内部からも検討し、ホールの気積確保やフラッターエコーを防ぐ役割に配慮した。内側は間伐材の木削片と木繊片を多重積層させた木繊セメント板で覆い、断熱や吸音に加え、コンクリートから発生するアンモニアを吸収する効果をもたせた。また、あらゆる展示や案内のスタイルに対応するため、組立式アルミ什器の「ポリゴ二ウム」を採用した。