北京 前門
天安門や長安街から徒歩5分の距離にある北京旧市街の中心、前門東区の再生プロジェクト。かつては明清時代の配置や工法による古典的な四合院が集まった地区であったが、都市の人口増を背景に互いに見知らぬ住民たちによって占拠され、「大雑院」と呼ばれる四合院のスラム化が進行していた。本計画では、地域を開かれたコミュニティとして再生するために、オフィス、住宅、商業、宿泊、飲食からなるミックスト・ユーズの街並みへと転換した。
木造部分の柱や梁は現地の職人によってひとつひとつ解体・補修の後、再度組み立てられ、外壁は伝統工法によるレンガ造にガラスカーテンウォール+アルミ押し出しによるスクリーンを組み合わせ、制御された透明感を持つ、ストリート(胡同)に開かれた四合院を実現した。2種類のみのアルミ押し出しによるパーツをジグソーパズルのように組みたてることで、「花格窓」(伝統建築で窓や扉に採用される格子)のようなオーガニックなスクリーンの文様を実現した。
高層ビルによって、胡同と四合院からなるかつての北京の大半は失われた。やわらかで、開かれた低層の複合機能都市として再生することができた。このプロジェクトの一角には、隈事務所北京オフィスも入居している。