日本 2020ホテルロイヤルクラシック大阪
連続唐破風で知られる村野藤吾の傑作、大阪新歌舞伎座(1958)を、現代アートのギャラリー機能を併設したホテルとして再生させた。
まず大阪のストリートカルチャーのひとつの中心である難波地区に回遊性を付加するため、建物の中心に大きな孔を開け、「座裏」と大通りをつなぎ直した。村野の連続唐破風は、PCとアルミパネルを用いて再生させ、上層部につけ足した客室棟のヴォリュームを、重層するアルミフィンの付いたカーテンウォールで覆った。アルミフィンは南北方向に1200mmピッチで、奥行方向にフィンの数を2枚から5枚と奥行きをランダムに重層させ、それによってカーテンウォールに雲や霧のような自然現象を想起させるユラギを与えた。
村野が試行を続けた、小さな粒子の集積による、やわらかで、女性的なものへの挑戦——連続唐破風はその典型——を、われわれは薄いアルミフィンという粒子を用いて継承しようと試みた。
内部においては、様々な小さな粒子を用いた天井を挿入することによって、各空間を定義し、色付けていった。その多様な空間の中に、大阪にゆかりのあるアートムーブメント「GUTAI」を中心とする日本の現代アートを点在させることで、ミュージアム、ホテル、バンケットという多義性を持つ複合空間が生まれた。