KAI Yufuin

日本 2022界 由布院

2022.8
大分
宿泊・娯楽
竣工
4,365
3F

ヒューマンなストリートで知られる日本を代表する温泉地、由布院温泉は、昭和半ばまで田畑や牧野の広がる農村であった。この由布院の原型である里山の農村を体感することのできる、棚田状のランドスケープが主役の旅館をデザインした。既存の棚田の地形を囲むように、深い軒をもつ切妻屋根の低層ボリュームを分散配置し、さらにその周辺に、木造の離れを点在させた。低層ボリュームの北側はくぬぎ林に抱かれ、南側は朝霧の見える谷に開き、東側露天風呂の先には由布岳を望む。この圧倒的な自然のなかで、深い緑の影の色の外壁によって、分棟型のヴォリュームを森の中に消していった。
農家の空間構成である「たたき/板間/座敷」の構成にヒントを得たロビーのたたき空間には、かまど風のフロントカウンターを配置し、板間は竹皮フローリング、座敷には国東半島の七島藺(しちとうい)を使用した。座敷部分は棚田を包みこむ長い縁側空間であり、ゲストは七島藺の円座や座椅子に腰掛け、棚田の眺望を満喫することができる。
様々な家具や小物まで、可能な限り地元の素朴な素材を使ってデザインし、農家らしさをアートに昇華させようと試みた。ポストコロナ時代の「民芸」のリスタートを試みた。

施工:フジタ・新成建設特定建設工事共同企業体
デザイン監修:株式会社隈研吾建築都市設計事務所
照明:ライティング プランナーズ アソシエーツ
設備:株式会社ハルス建築環境設計
ランドスケープデザイン監修:SEA BASS

チーム 宮原 賢次、芳井 菜穂子、中村 創*、キム ジョンウォン、鈴木 公雄 パブリケーション カーサ ブルータス 2023/08 、商店建築 2023/04 Vol.68 No.4 、近代建築 2022/09 vol.76