南三陸311メモリアル
2011年3月11日の東日本大震災で、最も大きな被害を受けた場所のひとつである南三陸の復興計画に2013年から携わり、10メートルかさあげされた大地を、①海とつなぎ直す②里山と神社とをつなぎ直す③ウォーカブルで楽しいストリートを作る の3つのコンセプトに基づいてマスタープランを作成した。
その中でコアとなる3つの施設、さんさん商店街(2017)、中橋 (2020)、3.11メモリアル (2022) をデザインし、この3.11メモリアルはその復興計画の集大成であり、海、里山、街 (ストリート) の3つの結節点であり、同時に過去の記憶を未来へとつながる、時間の結節点となるべく計画を行った。
建物はひとつの孔として計画され、この孔は、海からさんさん商店街のストリートをへて山へとつながる東西軸、震災記念公園から中橋をへて、上山八幡宮神社へとつながる南北軸の2つの軸を受けとめる。鳥居のような聖なるゲートとしてデザインした。
このゲートの外壁は、南三陸の杉でできた木製のルーバーで覆われ、ルーバーを透視図法の原理に従ってバニシングポイントから放射状に配置することによって、孔へと吸い込まれていくような、遠近法的効果を得ることができた。その外壁のパターンは、空間の距離感覚を失わせるだけではなく、時間の距離感覚をも喪失させて、われわれを別の時空へといざなってくれる。
中部には、震災の記憶を伝える様々な思い出の品々や映像が展示されているだけではなく、震災に触発されたクリスチャン・ボルタンスキーのインスタレーションMEMORIAL、そして震災にされた東京芸術大学の若いアーティスト達による作品群が展示されている。