t-room
千利休は待庵にスサのたくさんはいった粗い土壁を用いた。当時の支配的建築様式である書院造の無味乾燥でかたくるしい雰囲気に対するアンチテーゼがその土壁であった。直角であるはずの土壁の入隅は丸められ生き物のようなやわらかさをたたえていた。同じようにして、この茶室もやさしく、やわらかくありたいと思った。茶室とはかたくるしく規則正しい社会に対するアンチテーゼの場であると考えたからである。ここではスサの代わりにポリエステルのメッシュを用い、土のかわりに人工皮膚の素材であるシリコンを用いた (実はシリコンもある種の土から作られる)。 形状はただ丸いだけではなく、空気の出し入れによって生き物のようにブヨブヨと動くのである。かたくるしい建築 (社会) を壊し、生命体の本来の柔軟性に回帰するのがこの茶室の目標である。