英国 2014Sensing spaces
最小限の物質を用いて最大限のエフェクトを身体に対して与えてみようと考えた。物質の量をへらしていけばいく ほど人間はその残された小さく、薄く、細いわずかな物質に対して集中力を発揮し、センサーの性能を高めていって、そこから「何か」をかぎとろう、ききとろうとするのである。
日本の茶室はその原理に従って、物質のボリュームを削ることを続けてきた。だから茶室の柱も梁も、またすべてのフレームも信じられないほどに、小さく、薄く、細いのである。今回のプロジェクトは、現代の技術で直径4㎜の竹ひごを用いて、高さ5m の透明な香りの茶室を作ろうという試みである。その繊細な構造体から最大限の香りのエフェクトを引き出すことを目標にした。
2つのスペースに2つの茶室を作った。ひとつは「実の建築」であり「父の建築」である。もうひとつは「虚の建築」であり「母の建築」である。「父の建築」は空間の中に自立し、ヒノキの森の香りで満たされる。「母の建築」は体を包み込むマユであり、タタミの香りで満たされる。