帝京大学小学校
かつての日本の学校はすべて木造校舎であった。木の空間のあたたかさ、やわらかさから子供たちは多くのことを学んだ。僕自身木造校舎で学び、そこでの体験は忘れがたい。木造校舎を現代に再生しようと試みた。木造校舎とは大きな屋根と内外装における木のマテリアリティで構成される。屋根はその長さや軒の高さを変えることで、周辺環境や内部プログラムに柔軟に対応して多様性を生む。この計画ではまず大きな屋根で全体を覆い、多摩丘陵の緑が連なる南側に対しては大らかな表情を、公団の団地が並ぶ北側に対しては小さな表情を持つように屋根の形態を操作し、周辺環境との調和を図った。空間構成においては屋根の下にいて、屋根に守られているという感覚を建物のどこにいても感じられるようにした。3階建ての建物でありながら、吹き抜けやステップフロアという仕掛けで断面的につなげることで、子供たちは学年という枠を飛び越えて、自由に屋根の下を移動している。材料においては、木を多用するだけではなく、ワラ・イグサといった日本伝統の自然素材を用いたリサイクル建材を積極的に用いることで、子供たちに素材の豊かな感覚に触れてもらいたいと考えた。