Memu Meadows
Facility name: Memu Meadows Project name: Même
158-1 Memu, Taikicho, Hirogun, Hokkaido, Japan
2011.06
Experimental residence
79.50 m2
Memu Meadows
施設名:Memu Meadows (メム メドウズ) 物件名:Même (メム)
北海道広尾郡大樹町芽武158-1 他
2011.06
実験住宅
79.50 m2
競走馬の牧場 (大樹ファーム) を、サステナブルな建築・都市のあり方を追求する研究・教育・研修施設へと転換する試み。18万㎡の大草原の主役が、馬から人間へと変わる。テーマは早く走ることから、ゆっくりと転換することへと変わるのである。
計画は2つのパートに分かれる。第一部は、草原の中に建てられた実験住宅群。第二部は既存厩舎、走路を改修した宿泊研修棟である。実験住宅の第一号は我々が担当し、今後は一年に一棟ずつコンペ形式で選ばれたデザインが建設されていく予定であり、将来は世界に例のないサステナブル住宅ヴィレッジが大草原の中に出現するだろう。
我々が担当した第一号実験住宅は、アイヌの伝統的な住宅形式チセから多くのヒントを得た。チセで特筆すべきは、それが「草の家」であり「大地の家」であることである。
本州の民家は基本的には「木の家」、「土壁の家」であるが、チセは屋根も壁も萱や笹ですっぽりと覆った「草の家」であり、そうすることで断熱性を確保している。
さらに本州の民家では湿気を避けるために床を持ち上げて、その下に換気をとるのが普通だが、チセは床を上げずに大地の上に直接ガマのゴザを敷き、その中心に炉を切り、年間火を絶やすことがない。そのようにして大地を暖め続けて、そこからの輻射熱を享受するのが「大地の家」チセの基本原理である。
我々が提案したMÊME (フランス語で「同じ」の意味。また「メム」は計画地の地名で、アイヌ語で水の湧き出る場所という意味) は、「草の家」の柔らかさを膜材によって達成し、そのやわらかなぬいぐるみのような家を、大地の上に直接置くことにした。
具体的には現地のカラマツ材で組み立てた木の骨組みを、ポリエステルフッ素樹脂コーティングの膜材でくるみ、内側を脱着式のガラスクロスの膜材で覆って、その中間に、ペットボトルを再利用した光を透過するポリエステル製の断熱材を挟むという断面構成である。膜の間に空気の対流を作り出し、その流れによって内部環境を快適に保つというのが、この断面構成の基本的な考え方である。
断熱を断熱材の厚みだけで捉え、熱環流率だけを考える20世紀の静的な環境工学に代わる、動的な環境工学が目標である。床の輻射熱利用もその動的な環境工学の一環である。日光に包まれた屋外の草原のような光環境の中で生活したいという想いも、膜材で家を覆ったもう一つの理由である。照明に一切頼らず、明るくなれば起きて、暗くなったら眠るというような自然のリズムと同期した生活も、この膜の家の中でなら可能だろう。
一部、膜に外付けの納まりで木製断熱サッシが取り付けられている。様々なサッシを付替えながら家の生活環境をチェックするための新しい仕組みである。同様の考えで、インテリアのガラスクロスも全て脱着式で様々な環境実験が可能な仕組みである。
既存厩舎、走路の改修においては、馬の幸福は人間の幸福でもあるはずだという考えに基づいて、手を加える部分は最小限としている。馬のベッドルームであったところに、そのまま寝れるというのが、この牧場という環境で最大の贅沢と考えたのである。
今後、ゆっくり生活することに興味がある世界の研究者や学生がここに集い、学び語り合うことになるであろう。18万㎡の草原はそれだけのキャパシティーと魅力とを有する場所である。
